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AI・ChatGPTで許認可申請や行政手続きはどこまで自動化できるのか|行政書士が本音で書く

本記事は、当事務所の代表行政書士が実務に基づき執筆しています。

最近、「ChatGPTで建設業許可の申請書を作れますか」「AIを使えば行政書士に頼まなくても自分でできますか」という質問を受けることが増えました。結論から言うと、部分的には使えるけれど全部は無理、というのが正直なところです。

この記事では、行政書士として実際にChatGPTやClaudeを許認可申請の業務で使っている立場から、使ってみてどうだったかを書きます。AIツールの宣伝記事でもないし、「AIに仕事を奪われる」みたいな煽りでもないです。淡々と、実務で触った感想を書いていくだけの記事です。

まず建設業許可の申請書をChatGPTに作らせてみた話

まず建設業許可の申請書をChatGPTに作らせてみた話

具体的な話から入ります。

建設業許可の申請で一番手間がかかるのは、経管(経営業務の管理責任者)と専技(専任技術者)の要件を証明する書類の準備です。ここをAIで効率化できないかと思って、ChatGPTに「建設業許可申請の様式第二号(工事経歴書)の記載例を作ってください」と入力してみたことがあります。

出てきた内容は、まあ、それっぽい。工事名、請負代金、工期、配置技術者の欄がある。ただ、実際の兵庫県の書式と見比べると、記載項目の並び順が違っている。金額の端数処理(千円単位で切り捨てるのか四捨五入するのか)も間違えている。存在しない記載欄にデータを入れている箇所もありました。ぱっと見ちゃんとしてるのに、よく見ると間違いだらけ、というのがAIの厄介なところです。全くのデタラメなら逆に気づけるんですが、「惜しい」出力が一番怖い。

「ゼロから書くよりは早いかな」くらいの感想です。40〜60点の下書きが数分で出てくるので、そこから直していく分には悪くない。ただし、建設業許可に詳しくない人がこの出力をそのまま提出したら、確実に補正指示が出ます。経験上、ChatGPTが出してきた下書きを修正するのに結局30分以上かかることもあって、「最初から自分で書いた方が早かったな」と思うことも正直あります。この辺は案件の複雑さ次第です。

定款の作成も試しました。「合同会社の定款を作成してください。社員は2名、出資割合は○対○」と入れると、一応形にはなる。しかし会社法の条文との整合性が毎回どこかしら崩れている。「別段の定め」として書くべき内容と法定事項の区別がついていない出力が多い。デフォルトルール──定款で定めなかった場合に自動的に適用される規定──の理解がAIは甘いんだと思います。たとえば合同会社の利益配分は出資割合に応じるのが原則ですが、定款で別段の定めを置けば自由に変えられる。この「定めなくても問題ないけど、定めた方がいいケース」の判断はAIには難しい。定款は会社設立後に変更するのが面倒な書類なので、最初にちゃんと作っておかないと後で苦労します。そのまま法務局に出すと、補正が出るか、最悪は登記が通ってから問題になるかのどちらかです。

古物商許可の申請書も同様で、都道府県ごとに微妙に書式が違うことをAIは考慮してくれません。兵庫県警の書式とネットに出回っている他県の書式が混ざったような出力になる。結局、管轄署のHPから正規の書式をダウンロードして手で書いた方が早いということも珍しくないです。

それから産業廃棄物収集運搬業の許可申請でもAIを試したことがあります。事業計画書のたたき台を作らせてみたんですが、収集運搬の「積替え保管を含む」場合と「含まない」場合で記載すべき内容が全く違うのに、その区別ができていなかった。積替え保管を含む場合は保管施設の構造や容量の詳細が必要なんですが、AIはそこをさらっと流してしまう。許可の区分による書類の違いを理解していない、というのはどの許認可でも共通の問題だと思います。

もう少し具体的に書くと、ChatGPTが苦手なのは「行政書士が当然知っている実務上の慣行」です。建設業許可の申請書で「主たる営業所」の記載欄に何を書くか、「従たる営業所」がある場合にどこに番号を振るか、こういう細かいルールは各都道府県の手引きに書いてあるけれど、AIは都道府県ごとの手引きまでは学習していない。東京都と兵庫県で微妙に運用が違うということを知らないわけです。

あと、書類の形式面でAIが弱いのは「添付書類の組み合わせ」。建設業許可だと、経管の経験を証明するために「確定申告書の控え+工事の契約書+建設業許可通知書」みたいな組み合わせが必要になるケースがありますが、どの書類の組み合わせが有効かは管轄の行政庁によって微妙に基準が違う。この辺の「ローカルルール」をAIが把握しているはずもありません。

法令検索は意外と使えるが、信用しすぎると怪我をする

法令検索は意外と使えるが、信用しすぎると怪我をする

書類の下書きよりも実用的だと感じているのが、法令や通達の検索・要約です。

「建設業許可の経管の要件を教えて」「古物営業法の非対面取引における本人確認方法を列挙して」──こういう質問にはChatGPTはそこそこ正確に答えてくれます。条文の要約とか、複数の法令にまたがる論点の整理とか、自分でe-Govを引いてまとめるよりも確実に速い。

ただ、ここに大きな落とし穴がある。ChatGPTは法改正の情報を正確に反映していないことが多い。

実際にあったケース。2020年の建設業法改正で「補佐者」の制度が導入されましたが、ChatGPTにこの制度について聞いたら、改正前の古い要件を回答してきたことがあります。「特定建設業の財産的基礎の要件」を聞いたら、2025年2月に引き上げられた金額基準ではなく、改正前の4,500万円を答えてきた。法改正から数ヶ月経ってもAIの学習データに反映されていない。フリーランス新法(2024年11月施行)のような比較的新しい法律についても、施行前の情報と施行後の確定情報が混在した回答が返ってくることがありました。「この法律はいつ施行されますか?」と聞いて「2024年秋ごろを予定しています」と回答されたのは、もう施行済みの法律に対してです。

これ、法律に詳しくない人には本当に危険です。ChatGPTは「自信満々に」間違った情報を出すんです。存在しない条文を引用することもある。いわゆるハルシネーション(幻覚)と呼ばれる現象で、AIが学習データのパターンから「それっぽい」回答を生成してしまう。条文番号まで具体的に出してくるので、知識がないとそれが実在するかどうか判断できません。

アメリカでは弁護士がChatGPTに作らせた準備書面に実在しない判例が含まれていて、裁判所から制裁金を科された事件がありました。これは2023年の話で、AIを法律業務に使うリスクが世界的に認識されるきっかけになった事件です。日本でも許認可申請で虚偽の記載をしたら、不許可になるだけでなく欠格要件に該当する可能性すらある。建設業許可だと、虚偽申請は5年間の欠格事由になります。「知らなかった」では済まないんです。

使い方のコツとしては、ChatGPTに法令の質問をするときに「根拠条文も一緒に教えて」と付け加えること。条文番号が出てくれば、e-Govでその条文が実在するかどうか確認できる。条文番号なしに「○○とされています」と言われても、検証のしようがないので。。

もうひとつ、法令検索でAIを使う際に気をつけているのは「政省令と告示」の区別です。法律本体の条文はChatGPTも割と正確に拾ってくるんですが、施行規則や施行令、さらには告示レベルになると途端に怪しくなる。建設業許可の技術者要件なんかは施行規則の別表で細かく決まっているのに、AIの回答では法律本体の大枠しか出てこなくて、「この資格で専技になれますか」という質問に正確に答えられていなかったケースがありました。法律の階層構造を意識しないまま使うと、不完全な情報で判断してしまう危険がある。

あと、地味だけど助かっている使い方として、パブリックコメントの情報を探させるのがあります。「この法令について直近のパブコメはあるか」と聞くと、あればリンクを教えてくれることがある(ないこともある)。法改正の動向を追うときの最初のとっかかりとしては悪くないです。ただし、パブコメの結果の要約はAIに頼らず原文を読むようにしています。要約の過程で論点が落ちることがあるので。

顧客対応の効率化──ここが一番「当たり」だった

顧客対応の効率化──ここが一番「当たり」だった

書類作成や法令検索より、実は一番業務に効いているのは顧客対応の効率化です。

顧客への説明メールの文案、よくある質問のFAQ、ヒアリングシート。こういう「定型的だけど毎回ちょっとずつ違う」文書をAIに下書きさせるのは、かなり効率がいい。「古物商許可の申請を検討している個人事業主に、必要書類と手続きの流れを説明するメールを書いてください」と入力すれば、8割方使えるメールが出てくる。残り2割を個別の事情に合わせて直せばいい。メール作成の時間が半分以下になりました。

ヒアリングシートの作成も便利です。「建設業許可の申請に必要な情報を顧客にヒアリングするためのシートを作ってください」と指示すると、聞くべき質問項目がリストアップされたシートが出来上がる。もちろん許認可の種類ごとに聞くべきことは違うので、「古物商許可のヒアリング用」「産廃収集運搬のヒアリング用」とそれぞれ作らせる。完璧ではないけど、7割くらいの完成度のものが数分でできるので、そこに自分の経験から足りない項目を追加していけばいい。新しいスタッフに業務を引き継ぐときにもかなり役立っている。

在留資格関連の手続きでは、翻訳の補助にも使っています。中国語やベトナム語の書類の要点を日本語で要約させたり、日本語の申請書類の内容を英語で説明する文案を作ったり。完璧な翻訳は期待していませんが、「だいたいの内容を把握する」用途には十分です。専門の翻訳を外注すると数万円かかることもあるので、初期の内容確認だけなら十分もとは取れている。

顧客への見積もり書の文面なんかも、ベースをAIに作らせると楽です。「建設業許可の新規申請、法人、一般建設業、1業種」という条件を入れて、見積もりの説明文を作らせる。料金自体は自分で入れますが、「業務範囲」「スケジュール」「注意事項」みたいな説明部分はAIの出力をベースにして少し手直しするだけで使えるものになります。

この辺の使い方は、許認可申請そのものの精度に影響しないので、リスクが低い。AIの出力が多少不正確でも、メールの言い回しが少し変な程度で済む。法令解釈や要件判断とは違って、間違えても致命傷にはならない部分です。だから安心して使えるし、ここをAIに任せて浮いた時間を申請の核心部分──書類の精査とか行政への確認──に回せるのが一番大きいメリットだと感じてます。

要件判断と行政折衝──ここはAIに任せてはいけない

要件判断と行政折衝──ここはAIに任せてはいけない

ここまで読んで「結構使えるじゃないか」と思った方もいるかもしれません。でも、許認可申請の核心部分──要件判断と行政窓口とのやり取り──は、AIには任せられません。ここを間違えると申請が通らないし、もっと深刻な問題になり得ます。

建設業許可を例にすると。経管の要件を満たしているかどうかは、申請者の経歴、過去の在籍企業での地位と権限、従事していた業務の内容を総合的に見て判断します。同じ「部長」でも、経営に実質的に関与していたかどうかは会社ごとに全然違う。ChatGPTに「10年間工事部長でした。経管の要件を満たしますか?」と聞けば何かしら答えてくれますが、その回答を信じて申請して不許可になってもAIは責任を取りません。2020年の法改正で経管の要件は緩和されて、建設業に限らず役員経験が5年あれば認められるようになりましたが、この「役員経験」の中身をどう証明するかが実務上の最大のハードル。登記事項証明書、組織図、職務権限規程。どの書類をどう組み合わせるかは行政庁との事前協議で決まることも少なくない。

行政窓口との折衝も、経験がないと対応できない領域です。経管の経験年数がギリギリ5年に届くかどうか微妙なケースで、事前に担当者に相談して「この経歴証明書で大丈夫でしょうか」と確認を取っておくのと、いきなり書類を提出するのとでは結果が変わることがある。事前に話を通しておけば、「追加でこの書類があれば認めます」という柔軟な対応をしてもらえることもある。こういう人間同士のやりとりは、当然ですがAIにはできません。

兵庫県内の申請を多く扱っていますが、同じ県内でも窓口によって対応が微妙に違う。「この担当者はここを厳しく見る」みたいな情報は、AIのデータベースには存在しません。

イレギュラーな案件──前職の会社が倒産して証明書類が取れない、営業所の用途地域がグレー、過去に行政処分を受けている──こういうケースでは、制度の趣旨に遡って解釈を考えたり行政と個別に協議したりする必要がある。AIは「よくあるパターン」には対応できますが、「初めて見るパターン」には歯が立たない。許認可の実務はむしろ後者の方が多いです。

最近あった例でいうと、建設業許可の申請で、申請者の方が過去に別の法人で役員をしていて、その法人が許可の取消しを受けていたケース。欠格要件に該当するかどうかの判断が必要でしたが、取消しの理由と時期によって結論が変わる。ChatGPTに聞いたら「該当します」の一言で終わりました。でも実際には、取消しから5年を経過しているかどうか、取消しの原因が本人の責に帰するものだったかどうか、いろんな要素を検討した上で行政に相談して、最終的に申請が認められたケースです。こういう微妙な判断は、条文を知っているだけでは足りなくて、運用の実態を知っていないと対応できません。

書類の裏取り──経管や専技の実務経験証明書の記載内容を、過去の工事台帳や契約書と突き合わせて確認する作業──もAIにはできない。「この証明書の形式で通るか」という判断は、過去の申請経験がないと難しいところです。

飲食店営業許可や風俗営業許可のように、保健所や公安委員会の現地調査が入る許認可もあります。店舗の構造や設備が基準を満たしているかどうかは、図面と現場を照らし合わせて判断するしかない。AIに店舗の図面を見せて「この配置で許可が下りますか」と聞いても、まともな回答は返ってきません。手洗い設備の位置とか、客室の照度とか、物理的な条件を現場で確認する作業はどうしたって人の仕事です。

個人情報の問題──行政書士の守秘義務との兼ね合い

個人情報の問題──行政書士の守秘義務との兼ね合い

許認可申請では顧客の住所、生年月日、経歴、財務情報を大量に扱います。これをそのままChatGPTに入力していいのかという問題は、真剣に考えるべきです。

OpenAIのポリシー上、API経由のデータはモデルの学習に使用されないとされています。しかし通常のチャット画面から入力したデータは、設定でオプトアウトしない限り学習に使われる可能性がある。行政書士は守秘義務を負う職業です(行政書士法第12条)。顧客データの取り扱いには慎重でなければいけない。

対策としては、API経由で使う、個人情報を匿名化してから入力する、ChatGPTの設定で「Chat history & training」をオフにする、などがあります。データがOpenAIのサーバを経由すること自体に抵抗があるなら、ローカルで動くAIモデルを使う手もありますが、現時点では精度がだいぶ落ちる。この辺の使い分けは、事務所ごとにポリシーを決めておくべきだと思ってます。

うちの事務所では、顧客の個人情報をそのまま入力することは原則やっていません。「名前は○○、住所は△△」ではなく、「申請者は40代男性、兵庫県内在住、建設業の経験が15年」みたいに抽象化してから入力する。これで十分使える場面が多いし、万が一データが漏れても個人を特定できない。面倒ではありますが、守秘義務を負っている以上は必要なコストだと割り切ってます。

日本行政書士会連合会がAI利用に関するガイドラインを出すかどうか、業界内でも話題になることがあります。弁護士会は生成AI利用に関する注意喚起をすでに出していますし、税理士会も同様の動きがある。行政書士業界としても、いずれ何らかの指針が出るんじゃないかと個人的には思っていますが、今のところは各事務所の判断に委ねられている状況です。

AI生成の書類をそのまま提出して内容に誤りがあった場合、責任を負うのは申請者です。「AIが作ったので気づきませんでした」は通用しない。特に怖いのが、一見正しそうに見える誤り。定款の事業目的に存在しない法律用語が混ざっていたとか、許可申請書の「経営業務の管理責任者」欄に法改正前の旧制度の記載をしてしまうとか。法務局が見逃して登記が通ってしまうと、後から定款変更が必要になって余計な費用がかかる。

ちなみに、AIに個人情報を入力するリスクは行政書士に限った話ではないです。企業が従業員の個人情報をChatGPTに入力して社内文書を作っていた、というニュースもありました。Samsung がソースコードをChatGPTに入力して情報漏洩が問題になった件は有名ですが、行政書士事務所が扱う情報は住民票の写しとか戸籍謄本とか、より機微性の高いものが多い。この辺の意識は、業界全体でもっと持った方がいいと思っています。

じゃあ行政書士に頼む意味はあるのか

じゃあ行政書士に頼む意味はあるのか

「AIである程度できるなら、自分でやれるんじゃないか」──そう思う方もいると思います。実際、情報収集や書類の下書きまでは自分でできる。ChatGPTに要件を聞いて、必要書類のリストを出して、下書きを作らせて──そこまでは一人でやれます。

ただ、その先が問題です。出来上がった書類が要件を満たしているかどうかの判断、窓口での折衝、補正指示が出たときの対応。ここが許認可申請の本質であって、ここをAIに任せるのはまだ無理です。全部自分でやろうとしてChatGPTの回答を信じて窓口に持っていったら、書式が古いとか添付書類が足りないとか言われて何度も出直す羽目になった──そういう相談を後から受けることがあります。

むしろ、AIで下準備を済ませてから行政書士に相談する方が賢い使い方だと思います。全体像を把握した上で「うちの会社はこういう状況ですが、経管の要件を満たせますか」と具体的に聞けるので、相談時間も短くて済むし、費用も抑えられるかもしれない。

逆に、AIの回答を鵜呑みにして「自分は要件を満たしている」と思い込んだまま行政書士に相談に来る方もいます。話を聞いてみると、AIが示した要件は改正前のものだったり、そもそも該当する許認可の種類が違っていたりする。修正が効く段階で気づけばいいんですけど、申請してしまった後だとリカバリに手間がかかる。AIの回答はあくまで「調べる取っかかり」くらいに思っておいた方がいいです。

私自身もAIを業務で積極的に使っています。下書きを作らせる、法令検索の取っかかりにする、メールの文案を作る。そこは遠慮なく使う。ただし最終判断と確認は自分でやる。AIで浮いた時間を、要件判断や行政との折衝、顧客への説明に充てています。結果的に、以前よりも多くの案件を処理できるようになったし、一件あたりの対応品質も上がったと感じている。

正直に言うと、同業の行政書士の中にはAIを全く使っていない方もいるし、逆に使いすぎて質が落ちている方もいると思います。どちらが正解というわけでもなくて、自分の業務にどこまで組み込むかは各自の判断です。ただ、私はAIが脅威だとは思っていません。使い方を間違えると危ないだけで、ちゃんと使えば便利な道具です。電卓が出てきたときに「計算の仕事がなくなる」と言われた時代もあったそうですが、実際には計算が楽になっただけで判断する仕事は残った。AIもたぶん同じことだろうと思ってます。

AIツールの選び方──有料と無料の差は大きい

AIツールの選び方──有料と無料の差は大きい

最後にツールの話を少しだけ。無料のChatGPT(GPT-3.5)と有料のChatGPT Plus(GPT-4以降)では、法律関連の回答精度がかなり違います。無料版だと条文の引用がかなり曖昧で、存在しない条項を平気で出してくることがある。有料版の方が明らかに質が高い。月額20ドル程度の投資は、許認可申請の情報収集用途なら十分もとが取れると思います。

Perplexityのような検索特化型のAIも最近使うようになりました。こちらは回答にソースのURLがつくので、出典をすぐに確認できるのが便利。法令検索の最初の一手としてはChatGPTよりも使いやすい場面があります。ただし、出てくるURLが既にリンク切れになっていたり、古いページを参照していることもあるので、結局は自分で確認する手間は省けない。

ただし有料版でもハルシネーションは起こるので、「お金を払っているから正確」とは思わないでください。Claudeも法令関連は比較的いい感じですが、どのAIでも最終確認は必ず人間がやる必要があります。GPT-4oやClaude 3.5あたりのモデルは、条文の引用精度が以前のバージョンより明らかに向上しているものの、それでも施行規則レベルの細かい規定は間違えることがある。

許認可申請に特化したSaaSサービスも最近出てきていますが、まだ発展途上のものが多い印象です。汎用のChatGPTより精度が高いケースもありますが、カバーしている許認可の種類が限られていたり、更新頻度がまちまちだったりする。導入するなら無料トライアルがあれば試してから判断した方がいいでしょう。高額な年間ライセンスを払ったのに、自分が扱う許認可には対応していなかった──みたいな話も聞いたことがあるので、事前の確認は大事です。特に士業向けのAIツールは月額数千円〜数万円のものまでピンキリで、費用対効果を冷静に見極めないと固定費だけ増えて業務は変わらない、なんてことになりかねません。

個人で許認可申請を調べている方に向けて書いておくと、AIを使うなら「一つのAIだけに頼らない」のが鉄則だと思っています。ChatGPTで調べた内容をClaudeにも聞いてみる。両方が同じことを言っていればある程度信頼できるし、食い違う部分があればそこは自分でe-Govや行政の手引きを見て確認する。ダブルチェックの手間はかかりますけど、間違った情報で申請して不許可になるよりはるかにマシです。許認可申請は一発勝負じゃないにしても、補正や再申請を繰り返すと時間もお金もかかります。最初の情報収集の段階で正確性を担保しておくことが、結果的に一番コスパがいい。

まとめ

書類の下書き、法令の検索、顧客対応の効率化──この辺りはAIを使わない手はないと思います。実際に自分の業務でも、地味に時間がかかっていた作業がだいぶ楽になりました。特にメール対応と法令調査の初期段階では、体感で3割くらい時間が短縮されている。

一方で、要件を満たしているかの判断、行政窓口との折衝、イレギュラー案件への対応、最終的な責任──ここは人間がやるしかない。許認可申請は書類を作る仕事ではなく判断する仕事なので、判断の部分はまだしばらく人間の領域だと考えています。AIが進化して書類作成が自動化されればされるほど、逆に「判断できる人」の価値は上がるんじゃないかと。

3〜5年後にはAIの精度がさらに上がって、古物商許可みたいな比較的シンプルな申請はAIだけで完結するようになるかもしれません。行政手続き自体のデジタル化も進んでいくでしょうし、申請書の自動生成ツールはもっと増えるはずです。でも建設業許可のように要件判断が複雑な分野は、専門家の関与がなくなる日はまだ遠いと思ってます。AIで下調べをして、判断は専門家に任せる。今のところは、この使い分けが一番現実的です。

何か許認可でお困りのことがあれば、AI活用も含めてご相談いただければと思います。「ChatGPTでここまで調べたんですけど、合ってますか」という相談も大歓迎です。むしろ、そういう方の方がスムーズに話が進むことが多いです。