経営戦略

ドローンの飛行許可申請を自分でやってみた結果|行政書士が申請の全体像と落とし穴を解説

本記事は、当事務所の代表行政書士が実務に基づき執筆しています。

ドローンを買って箱から出した瞬間、「これ、どこで飛ばしていいんだろう」と不安になった経験がある人は多いと思います。あの小さい箱に入っている機体が、実はかなり厳格な法規制の対象だということを買ってから知る人のほうが多いんじゃないでしょうか。私のところにも「ドローン買ったんですけど許可って要りますか」という相談が月に何件か来るようになりまして、正直なところ3年前まではドローン案件なんてほぼゼロだったのが、ここ1〜2年で急に増えました。建設業や不動産業のお客さんが業務で使いはじめたのと、趣味で始めた個人の方からの問い合わせと、半々くらいの割合です。

行政書士としてDIPS2.0の申請代行をやるようになって気づいたことがあります。ネットに転がっている情報の大半がドローンスクールの運営会社が書いた記事で、最終的に「だから資格を取りましょう」という着地になっている。それ自体は間違いではないんですが、「いま手元にドローンがあって、来週飛ばしたい人」が本当に知りたい情報とはズレてるんですよね。

この記事では、行政書士として実際にDIPS申請をやってきた経験をもとに、飛行許可の全体像と、申請時に実際につまずきやすいポイントを書きます。法令の正確性は担保しつつ、「で、結局どうすればいいの」という部分をなるべく具体的に。

先に断っておくと、ドローン関連の法規制は毎年のように改正されています。この記事は2026年5月時点の情報で書いていますが、半年後には一部変わっている可能性がある。特に2025年3月24日に施行されたDIPS改正は大きな変更だったので、それ以前の情報がネット上にそのまま残っていて混乱を招いているケースをよく見ます。「2024年版」「2023年最新」と書かれた記事の内容が現行制度と一致しているかどうかは常に確認が必要です。

そもそもドローンを飛ばすのに許可はいるのか?

そもそもドローンを飛ばすのに許可はいるのか?

結論から言うと、「場所と飛ばし方による」としか言いようがない。これが一番困るところだと思います。

まず大前提として、航空法上��「無人航空機」に該当するのは重量100g以上の機体です(バッテリー込みの総重量)。2022年6月の法改正で、それまで200g未満は対象外だったのが100g以上に引き下げられました。いまAmazonで売れ筋のDJI Mini 4 Proは249gなので、当然ながら航空法の規制対象になります。

じゃあ100g未満なら何も気にしなくていいかというと、そう単純でもなくて。航空法の「無人航空機」としての規制は受けませんが、小型無人機等飛行禁止法(重要施設の周辺300m)や、各自治体の条例(公園でのドローン禁止など)、それから民法上の土地所有権の問題は100g未満でも適用されます。

先日、相談に来られた方で「Telloなら79gだから大丈夫ですよね」と仰る方がいたんですが、飛ばそうとしていた場所が県の管理する公園で、条例でドローン全面禁止でした。重量に関係なくアウ���です。こういう���ースは割とあって、航空法だけ見てると足元をすくわれる。

もうひとつ補足しておくと、たとえ自分の敷地内であっても上空150m以上で飛ばせば航空法の規制対象になりますし、DID(人口集中地区)に該当するエリアであれば自宅の庭から飛ばしても許可が必要です。「自分の土地なのに許可がいるの?」という反応をされる方が意外と多いんですが、航空法は空域の安全を守るための法律なので、土地の所有権とは全く別の軸で規制がかかります。ここを混同している人がかなりいる印象で、「自分の田んぼで農薬散布するだけなのに許可が要るんですか」という電話を何回もらったかわかりません。要ります。DIDに該当していれば。

□ 100g以上のドローンに課される3つの義務

100g以上の機体を屋外で飛ばす場合、大きく分けて3つの義務が発生します。

1つ目が機体登録。これは自動車のナンバープレートみたいなもので、国土交通省の登録システムに機体情報を登録して、登録記号(JUから始まる英数字)を機体に表示する義務があります。表示方法は、機体の見やすい場所に3mm以上の文字で記載(シールでも油性ペンでも可)。併せてリモートID機能(飛行中に機体情報を電波で発信する仕組み)の搭載も必要です。最近のDJI機体にはリモートID機能が内蔵されているので追加機器は不要ですが、古い機体や自作機は外付けのリモートID発信器(1万〜2万円程度)を取り付ける必要があります。これは飛行許可の申請とは別の手続きで、DIPS上で機体登録→登録記号取得→リモートID紐付けという流れになります。手数料はマイナンバーカード認証で1機あたり900円。有効期限は3年で、更新を忘れると登録が失効します。

2つ目が飛行許可・承認の取得。これが本記事のメインテーマですが、特定の空域や特定の方法で飛ばす場合に国土交通大臣の許可または承認が必要になります。具体的にどういう場面で必要になるかは次の章で詳しく書きます。

3つ目が操縦者の要件。飛行経歴10時間以上、航空法の知識、安全確保の能力が求められます。国家資格がなくても許可申請はできますが、この操縦者要件を満たしていることが前提です。国家資格(二等)を持っていればこの操縦者要件は自動的にクリアされるので、申請時の記載が楽になるというメリットがあります。逆に資格がない場合は、飛行経歴や知識の裏付けを自己申告で書く必要があって、これが慣れていないと何をどう書けばいいか迷うポイントでもある。

ここで私が実務上よく遭遇する問題なんですが、「機体登録はやったけど飛行許可は取っていない」というパターンがかなり多い。機体登録って割と簡単にできてしまうので(マイナンバーカードがあれば900円、15分くらいで完了する)、「登録したから飛ばしていい」と思い込んでしまうようです。機体登録は「この機体は私のものです」という届出にすぎず、「この場所でこの方法で飛ばしていいですか」という飛行許可とは完全に別物だということは強調しておきたい。

飛行許可が必要な場面を整理する

飛行許可が必要な場面を整理する

航空法が定める「特定飛行」に該当する場合、事前に許可または承認を得る必要があります。特定飛行は大きく分けて「飛行空域」に関するものと「飛行方法」に関するものがあります。

飛行空域の制限としては、空港等の周辺空域、150m以上の高さの空域、人口集中地区(DID)の上空、緊急用務空域の4つ。このうち緊急用務空域は災害時に一時的に設定されるもので、ここだけは許可申請ではなく飛行自体が禁止されます。申請しても飛べません。。

飛行方法の制限は6つあって、夜間飛行、目視外飛行、人・物件から30m未満の飛行、催し物上空の飛行、危険物の輸送、物件の投下。このうち一般的な空撮や点検業務で関わってくるのは最初の3つ(夜間・目視外・30m未満)で、危険物輸送と物件投下は農薬散布や物流ドローンなど特殊な用途の話になります。催し物上空はイベント撮影で該当するので、お祭りやスポーツイベントの空撮を頼まれた場合は個別申請が必要です。

ここで正直に言ってしまうと、普通にドローンで空撮しようとしたら、ほぼ確実に何かしらの特定飛行に該当します。たとえば住宅地で飛ばせばDID上空に該当するし、建物から30m以内で飛ばせば「30m未満」にも該当する。「許可不要で飛ばせる場所」を探すほうが難しいのが現実です。河川敷や山間部の私有地でもない限り、何らかの許可は必要になると考えたほうがいい。

具体的な例をいくつか挙げます。神戸市内で不動産の空撮をしたいとなると、市街地はほぼ全域がDIDに該当するので「DID上空の飛行許可」が必須。加えて、撮影対象の建物に近づくと「30m未満」にも抵触する。さらに送信機のモニターで映像を確認しながらの操縦は「目視外飛行」に該当する可能性がある(機体を直接目視せず、モニター越しに操縦する場合)。つまりひとつの案件で3つの特定飛行に同時に該当するのが普通です。

一方で、たとえば三田市の山間部にある自社の資材置き場で、周囲に人家がなく、DIDにも該当しない場所であれば、地上付近を目視しながらの飛行は許可不要で行えます。ただしこの場合でも、夕方17時以降は「夜間飛行」に該当する可能性がある(日没時刻による)ので、時間帯には注意が必要です。日没時刻は季節で大きく変わりますから。冬場の16時台の薄暗い空で「これは昼間なのか夜間なのか」と迷ったことがあるお客さんもいました。答えは国立天文台の日没時刻を参照してくださいという話なんですが、現場だと判断に困る場面は実際あります。

□ 許可と承認の違い——意外と混同されている

実務上あまり意識する必要はないのですが、法律上は「許可」と「承認」で区別されています。飛行空域に対する制限の解除が「許可」、飛行方法に対する制限の解除が「承認」。DIPS上では一括で申請できるので、実際の手続き上はあまり気にする場面はありません。ただ、「飛行許可」と書いてあるのに実態は「承認」だったりするので、行政文書を読むときだけ注意してください。

余談ですが、この「許可」と「承認」の区別を理解していないドローンスクールの記事が結構あって、「飛行許可を取れば夜間飛行もOK」みたいな雑な書き方をしている。正確には夜間飛行は「承認」事項です。許可書にも「許可」と「承認」が併記される形で出てくるので、自分が取得した許可書をちゃんと読んでおいてほしい。何をどういう根拠で飛ばしていいのかが書いてあるわけですから。

あと、よくある誤解として「許可を取ったら好きな高さまで飛ばせる」と思っている人がいます。包括申請で取れる許可の範囲は通常150m未満の高さまでで、150m以上の高さで飛ばしたい場合は個別申請が必要です。しかも150m以上は空港事務所との調整が入る可能性が高いので、時間的余裕を持って申請する必要があります。「絶景を撮りたいから200mまで上げたい」という動機はわかるんですが、そこは飛行機やヘリコプターが飛んでいる空域に近づく話になるので、規制の厳しさが段違いになる。

DIPS2.0で申請する流れを最初から最後まで

DIPS2.0で申請する流れを最初から最後まで

ここが一番書きたかったところです。国土交通省のドローン情報基盤システム(DIPS2.0)でのオンライン申請が原則になっていて、郵送や窓口持参での申請も制度上は可能ですが、2026年現在、事実上DIPSの一択です。郵送で出すメリットは皆無だと思ってください。処理が遅くなるだけです。DIPSのURL(https://www.ossportal.dips.mlit.go.jp/)にアクセスして、まずはアカウント登録するところから始まります。個人でも法人でも申請可能で、法人の場合は代表者または申請担当者名義でアカウントを作ります。

大まかな流れだけ先に書くと、アカウント作成→機体情報の登録→操縦者情報の登録→申請書作成→飛行マニュアルの選択→提出→審査→許可書ダウンロード。文字にすると簡単そうですが、初めてやると2〜3時間はかかると思ってください。慣れている私でも新規のお客さんの案件は1時間くらいかかります。

アカウント作成自体はメールアドレスがあればすぐできるんですが、問題はその次の機体情報登録です。機体のメーカー名、型式名、製造番号、重量、最大離陸重量、改造の有無などを入力します。DJIのような大手メーカーの機体であれば、機種を選択するだけで情報が自動入力される仕組みになっているので楽なんですが、自作機やマイナーメーカーの機体だとすべて手入力になる。自作のFPV機を飛ばしたいという方がいて、機体情報の入力だけで1時間以上かかったことがあります。写真の添付も求められるので、機体の全体像・プロペラ・バッテリー部分などを撮影して準備しておく必要がある。

□ 包括申請と個別申請、どっちを選ぶべきか

申請には「包括申請」と「個別申請」があります。包括申請は「日本全国、1年間有効、飛行場所・日時を特定しない」形で申請できるもので、個別申請は「いつ、どこで、何のために」を特定して申請するもの。

私は基本的に包括申請を勧めています。理由は単純で、毎回個別に申請していたら手間がかかりすぎるからです。ただし、包括申請ではカバーできない飛行もあって、たとえば催し物上空の飛行やイベント撮影は個別申請が必須。空港周辺での飛行も個別申請になります。

ここでひとつ実例を出すと、去年の秋に不動産業者から「物件の空撮を定期的にやりたいから包括申請してほしい」と依頼されて、DID上空+30m未満+目視外の包括申請を出したんですが、飛行マニュアルの選択で少し迷いました。DIPSに用意されている航空局標準マニュアル01と02があって、01は基本的なもの、02は物件投下や危険物輸送など特殊な飛行にも対応したもの。01で十分だと思って申請したんですが、補正指示が来て「目視外飛行の安全対策が不十分」と。結局、飛行マニュアルに補助者の配置体制を追記して再提出しました。

こういう「出してみたら補正が来る」パターンは割と日常的で、だいたい10件に3件くらいは何かしら指摘される印象です。初めて自分で申請する人はもっと高確率で補正が来ると思う。

補正が来ること自体は別に怒られているわけではなくて、「ここをこう直してください」という事務的なやり取りです。DIPSのメッセージ機能で補正内容が通知されるので、修正して再提出すればいい。ただ問題は時間です。補正通知が来るまでに数日、修正して再提出してからまた数日、さらに補正が来たらまた数日。こうやって2週間3週間と延びていく。飛行予定日が決まっている案件だとこれが致命的になることがある。

以前、建設会社から「来月の現場入りまでに測量用ドローンの許可を取りたい」と言われて受けた案件で、初回申請→補正→再提出→さらに補正→再々提出、と3往復して結局25日かかったことがありました。飛行マニュアルの安全対策の記載が審査官の求めるレベルに達していなかったのが原因で、何をどこまで書けばいいかの基準が明文化されていない部分があるので、審査官の裁量に左右される面は正直あります。

□ 操縦者要件(飛行経歴10時間)をどうやって満たすか

これ、地味にハードルが高い。特定飛行の許可を得るには、操縦者が「10時間以上の飛行経歴」を有していることが要件のひとつです。この10時間はシミュレーターではなく実機での飛行時間。GPS補正ありのATTIモードでもGPSオフのマニュアルモードでも、とにかく実機を飛ばした時間。1日2時間ずつ飛ばしたとして5日。そう考えると「週末だけ練習して1ヶ月」というのが現実的なペースでしょうか。

じゃあどこで10時間飛ばすんだという話になるんですが、許可が不要な場所(DIDでもなく、30m制限にもかからない場所)で練習するしかない。田舎の河川敷とか、知人の私有地とか、有料のドローン練習場とか。兵庫県内だと三木市や加東市あたりに屋外練習場がいくつかありますし、神戸市内にも室内練習場はある。ただ屋内練習は航空法上の飛行経歴にカウントできるかどうか微妙なライン(屋内は航空法の適用外なので「無人航空機の飛行」に該当するかは解釈が分かれる)で、確実にカウントしたいなら屋外で飛ばすのが無難です。

ここが鶏と卵の問題で、「許可が欲しいけど経歴がない、経歴を積みたいけど飛ばせる場所がない」という状態に陥る人が結構います。都市部に住んでいる人ほどこの問題は深刻で、近所に許可不要で飛ばせる広い場所がない。車で1時間走ってやっと見つけた場所も、よく調べたらDIDの端にかかっていた、みたいなことが普通にある。DIDの境界は国勢調査のデータをもとに設定されていて、地理院地図(https://maps.gsi.go.jp/)で確認できるんですが、境界線のギリギリを攻めるのはおすすめしません。GPSの精度も考えると、明確にDID外だと言える場所を選んでください。

ドローンスクールに通えば飛行経歴の証明は楽になります。ただ、二等資格の取得まで含めると20万〜30万はかかるので、趣味でちょっと飛ばしたいだけの人には正直割に合わないと思っている。これは行政書士としてというより個人的な感想です。スクール通わなくても、飛行記録をちゃんとつけておけば(日時・場所・飛行時間・内容)、それをDIPSに入力すれば要件は満たせる。問題は、その飛行記録を後から作っても書類上はバレないという点で、ここは正直モラルの問題になってしまう。制度の穴だと思いますけど。。

2025年3月24日のDIPS改正で、操縦者情報の登録画面が簡素化されたのは良い変更でした。以前はかなり細かく入力させられていたのが、だいぶスッキリした。ただ、簡素化されたぶん「何を書けばいいかわからない」という相談は逆に増えた気がします。情報量が減ると判断に困るというか。

□ 申請書作成で実際につまずくポイント

DIPS2.0の画面に沿って入力していけば申請書は作れるんですが、私がお客さんの申請を代行していてよく引っかかるポイントをいくつか。

まず「飛行の目的」の記載。「空撮」とだけ書いて出すと高確率で補正が来ます。「不動産物件の広告用写真撮影」「太陽光パネルの点検」「建設現場の進捗管理」のように具体的に書く必要がある。

次に飛行経路の設定。包括申請なら経路の特定は不要なんですが、個別申請の場合は地図上で飛行範囲を指定します。このとき、DIPS上の地図が若干使いづらくて、ピンを打つ場所がズレると空港の管制区域にかぶってしまったりする。それで「空港事務所への連絡が必要」と表示されてパニックになるという。

あと、盲点なのが「第三者の立入りを制限する措置」の記載。DID上空で飛ばす場合、補助者を配置して第三者の侵入を監視する体制を記載しないといけない。これを「なし」にすると申請が通りません。カテゴリーIIB飛行で立入管理措置なしで飛ばすには、二等以上の国家資格と機体認証が必要になるので。

具体的には「飛行範囲の直下および周辺に補助者を配置し、第三者の接近を操縦者に知らせる体制を構築する」「第三者の接近を確認した場合は直ちに飛行を中止する」といった内容を飛行マニュアルまたは申請書の安全対策欄に記載する。文言自体は航空局標準マニュアルに載っているのでそこから引用すれば済む話なんですが、初めての人は「補助者って何人必要なの」「距離はどれくらい離れているの」と細かい疑問が出てくる。答えとしては、飛行範囲の広さや見通しによって適切な人数は変わるので一概には言えないんですが、一般的な空撮であれば操縦者1名+補助者1名の計2名体制が最低ラインです。

申請から許可書が出るまでの期間は、公式には「10開庁日前までに申請」とされていますが、補正が入ると当然伸びる。私の経験上、スムーズに行けば1週間程度、補正が1回入ると2〜3週間見ておいたほうがいいです。「来週の撮影に間に合わせたい」と言われて冷や汗かいたことは何度もあります。

ちなみに許可書が発行されたあとの話。包括申請で許可を取得した場合、有効期間は最大1年間です。この1年が切れる前に更新申請を出す必要があるんですが、これを忘れる人がけっこういる。許可切れのまま飛ばしていたことに後から気づいて青ざめた、という相談を年に2〜3件は受けます。DIPSから期限前にメール通知が来る設定にしておくべきです。あと見落としがちなのが、許可書に記載された条件の遵守。たとえば「日出から日没まで」という条件が付いているのに夕方遅くまで飛ばしていたとか、「補助者を配置すること」と書いてあるのに一人で飛ばしていたとか。許可は取ったけど条件を守っていないと、結果的に無許可飛行と同じ扱いになりかねません。

それともう一点、包括申請で許可を取っている場合でも、実際に飛行する前に「飛行計画の通報」をDIPS上で行う義務があります。これは2022年12月から始まった制度で、飛行の日時・場所・高度などを事前にシステムに登録するものです。許可を取った=即飛ばしていい、ではなくて、その都度の飛行計画通報が別途必要。ここを知らない人が本当に多い。許可書だけ見せて「これで全部OKですよね?」と聞かれるたびに、「いや、飛行計画の通報もやってください」と説明しています。

国家資格(一等・二等)を持っていると何が変わるのか

国家資格(一等・二等)を持っていると何が変わるのか

ここはあえて短めに書きます。というのも、国家資格の制度自体はかなり複雑で、ここだけで1記事書けてしまうので。

2022年12月に「無人航空機操縦者技能証明制度」が始まって、一等資格と二等資格ができました。二等資格を持っていると、カテゴリーII飛行(特定飛行のうち立入管理措置を講じるもの)について、飛行許可・承認の申請が不要になるケースがあります。具体的には、DID上空・夜間飛行・目視外飛行・30m未満の飛行について、二等資格+第二種機体認証があれば申請不要で飛ばせる(立入管理措置は必要)。全部が不要になるわけではなく、「空港周辺」「150m以上」「催し物上空」「危険物輸送」「物件投下」は依然として許可が必要です。

一等資格は、カテゴリーIII飛行(第三者の上空で補助者なし)を行うために必要。一等資格+第一種機体認証を受けた機体、というセットが必要です。現状、カテゴリーIII飛行を実運用している事業者はまだ少数で、物流のドローン配送とか、かなり限定された場面で使われている段階です。一等資格の取得費用は二等の倍以上かかる(スクール経由で50万〜80万円程度)し、対応している機体もまだ限られているので、一般の空撮事業者が今すぐ一等を取る実益は薄いと私は考えています。将来的に有人地帯での目視外飛行(レベル4飛行)が普及すれば話は変わってきますが、それはまだ先の話だろうと。

正直なところ、「趣味で空撮」「業務で点検撮影」程度であれば、二等資格がなくても包括申請を取れば同じことができます。資格のメリットは「一部の申請が省略できる」「申請時に操縦者要件の証明が楽」という手続き面の効率化が主で、「資格がないと飛ばせない」わけではない。この点をスクール系の記事はあんまり書かないんですよね。書いたら商売にならないから当然なんですが。

ただ、将来的に規制が変わって「国家資格必須」になる可能性がゼロかと言われると、そこは何とも言えません。今の制度設計を見る限り、国交省は段階的に国家資格の重要性を高めていく方向に見えるので、事業でドローンを継続的に使うなら二等は取っておいたほうがいいかもしれない、とは思っています。あくまで私の推測です。法改正がどう転ぶかなんて誰にも断言できないので。

費用面について補足すると、二等資格の取得費用は登録講習機関(スクール)経由で20万〜35万円が相場。初学者向けコースと、民間資格保有者向けの経験者コースで金額が異なります。経験者コースなら10万〜15万円程度で取れる場合もある。試験手数料は学科8,800円、実地19,800円〜22,200円(機種による)。指定試験機関での直接受験も制度上は可能ですが、実地試験の合格率があまり公表されていないのと、独学で実地試験に受かるのはかなりハードルが高いと聞いています。

許可なしで飛ばして捕まった事例と罰則

許可なしで飛ばして捕まった事例と罰則

航空法違反でドローンを無許可飛行させた場合、50万円以下の罰金が科されます。「以下」なので実際にはもっと軽いことが多いんですが、書類送検された事例は結構あります。

2023年に大阪で、DID上空で許可なく飛行させた男性が書類送検されました。観光目的の空撮で、SNSに動画を上げていたのが発覚のきっかけです。YouTubeやInstagramに無許可飛行の動画を上げて通報されるパターンは定期的にニュースになっていて、「バレなければいい」と思っている人が一定数いるんだなと。

もう少し身近な例だと、不動産業者が物件撮影のために住宅地上空でドローン飛ばして、近隣住民から通報されたケース。これは神戸市内でも聞いたことがあります。通報を受けた警察が来て、許可書の提示を求められて「持ってません」と。この場合、悪意がなくても(単に許可制度を知らなかっただけでも)航空法違反は成立します。故意犯でなくても過失犯として立件可能なので。結果的にその業者は厳重注意で済んだらしいですが、再犯すれば書類送検されていたと思います。

ただ、罰則の実態として言うと、初犯で悪質性がない場合は警告や厳重注意で終わることも多いようです。これは私が警察に確認したわけではなく、複数のお客さんから聞いた話をまとめた印象論ですが。だからといって「捕まっても大したことない」と考えるのは間違いで、問題は罰金だけじゃない。書類送検されれば前科がつくし、業務で使っている場合は取引先の信用を失う。個人情報の絡む空撮データを持っていた場合はプライバシー侵害で民事訴訟を起こされるリスクもあります。

もっと深刻なのは機体登録を全くせずに飛ばしているケース。機体登録義務違反は1年以下の懲役または50万円以下の罰金で、飛行許可違反より刑が重い。リモートIDを搭載していないと、そもそも飛行中に当局に識別されうるわけで、見つかったら言い逃れはできません。2022年6月の制度開始から4年が経っていますが、いまだに未登録で飛ばしている人がいるのは驚きです。制度を知らないのか、知っていて無視しているのか。どちらにしても事故が起きたときの責任は変わらないんですが。

小型無人機等飛行禁止法に違反した場合は、1年以下の懲役または50万円以下の罰金。これは重要施設(国会議事堂、首相官邸、原発、自衛隊施設など)の周辺300m以内での飛行禁止に違反した場合です。2026年の法改正で、この範囲が1,000mに拡大される方向で議論されているという点は要注意。対象施設は内閣官房のウェブサイトに一覧が公開されているので、飛行予定地の近くに対象施設がないか事前に確認しておくことを勧めます。

ちなみに、この小型無人機等飛行禁止法は航空法とは別の法律で、所管も異なります(航空法は国交省、小型無人機等飛行禁止法は警察庁が中心)。なので航空法上の飛行許可を取っていても、小型無人機等飛行禁止法の対象施設周辺では飛ばせません。「DIPS許可取ってるから大丈夫でしょ」という考えは通用しない。法律が別なんです。ここを知らない人はほんとに多くて、お客さんに説明するたびに驚かれます。

あと、意外と見落としがちなのが都道府県や市区町村の条例。「公園でドローン禁止」という条例を設けている自治体は非常に多くて、これに違反すると5万円以下の過料が科される場合があります。罰金ではなく過料なので前科にはなりませんが、注意指導→退去命令→過料という流れになります。神戸市も多くの都市公園でドローンの使用が禁止されていますし、河川敷についても河川法の許可が必要なケースがある。「河川敷なら誰もいないし大丈夫だろう」と思って飛ばしていたら河川事務所の職員に声をかけられた、という話も聞いたことがあります。

個人的に一番怖いと思っているのは、事故を起こした場合の民事責任です。ドローンが落下して人にケガをさせた場合、許可の有無に関係なく不法行為責任(民法709条)を問われます。許可を取っていなかった場合は過失の認定がほぼ確実になるので、損害賠償額が膨らむ可能性が高い。ドローン保険に入っておくべきという話は、許可申請以前の問題としてお伝えしておきたい。

ドローン保険は大きく分けて「賠償責任保険」と「機体保険」があって、最低限入っておくべきは賠償責任保険のほう。DJI製品を買うと1年間の無料保険が付いてきたりしますが、カバー範囲を必ず確認してください。対人賠償1億円、対物賠償5,000万円くらいが一般的な補償額です。年間保険料は趣味用で1万円前後、事業用で2〜3万円程度。これをケチって無保険で飛ばしている人を何人か知っていますが、正直理解できないです。何百万の機体を買う金はあるのに年1万の保険は入らないのかと。まあ人それぞれですけど。

行政書士に頼むか自分でやるか

行政書士に頼むか自分でやるか

最後に営業っぽくなってしまうんですが、聞かれることが多いので書いておきます。

自分でやるか頼むかの判断基準について、私なりの考えを正直に書きます。

DIPS2.0での申請は、慣れてしまえば自分でもできます。2回目以降は前回の申請内容をコピーできるので、初回さえ乗り越えればそこまで大変じゃない。ただ、初回申請で補正を何往復もして3週間かかった、という話はよく聞きます。

自分でやる場合に覚悟すべきことを列挙すると、まずDIPSの画面設計が直感的でない部分がある(改善されてはいるけどまだ分かりにくい箇所がある)、補正が来たときに何をどう直せばいいかの判断に迷う、航空局標準マニュアルの読み込みが必要、飛行計画通報の義務を毎回果たす必要がある、そして許可の有効期限管理。このあたりを「面倒だけどやれる」と思えるなら自分でやったほうが安上がりです。

行政書士にドローン飛行許可の申請を依頼した場合の報酬相場は、包括申請で3万〜5万円、個別申請で2万〜4万円くらいが多い印象です。事務所によってかなり差があるので一概には言えませんけど。機体登録の代行も含めると+1万円くらい加算されるケースが多いです。あと「更新申請」は新規よりも安く設定している事務所が多くて、1万〜2万円前後。当事務所でもドローン申請はお受けしていますが、正直なところ1回きりの趣味利用であれば自分でやってみてもいいんじゃないかと思っています。DIPSの画面自体は年々改善されているので。

ただ、「時間を金で買う」という発想でいえば、本業が忙しい事業者にとっては初回2〜3時間+補正対応の時間を行政書士に丸投げして本業に集中するほうが合理的だとも思う。3万円で半日分の時間が浮くなら安いと考える経営者は多いです。結局は本人の時間単価と、手続きに対するストレス耐性の問題だと思っています。DIPSの画面でイライラするのが嫌な人は外注したほうが精神衛生上よろしいかと。

逆に、事業としてドローンを使う場合(不動産撮影を定期的にやる、建設現場の点検に使う等)は、最初だけでも行政書士に頼んで正しい申請書のひな形を作ってもらったほうが、その後の更新・変更申請が楽になります。何がどう記載されているか理解した上で自分で回していくのが一番効率いいと思う。初回だけ依頼して、2回目以降は自分でやるというパターンのお客さんは実際に多いです。「最初に正解を見せてもらえれば、あとは真似できます」と言われることもあって、それはそれでいいと思っています。正直な話、毎年の更新申請だけで報酬を取り続けるのは申し訳ない気持ちもあるので。

もう一点、行政書士と弁護士の違いについて聞かれることがあるんですが、ドローンの飛行許可申請は行政書士の独占業務(官公署に提出する書類の作成)にあたるので、弁護士に頼む場面はありません。ドローンで事故を起こして損害賠償請求をされた、という場合は弁護士案件ですが、許可申請の段階では行政書士で十分です。というか弁護士に飛行許可申請を頼むとたぶんもっと高いです。

それから、ドローン申請を専門に扱っている行政書士と、そうでない行政書士の違いについても触れておきます。ドローン関連の法規制はここ数年で猛スピードで変わっていて、2022年の機体登録義務化、同年12月の国家資格制度開始、2025年3月のDIPS改正と、毎年のように制度が変わる。こういう分野は「ついでにやっている」事務所と、「メインで追いかけている」事務所でかなり知識の差が出ます。当事務所も建設業許可がメインではあるんですが、ドローン案件は積極的に受けるようにしていて、航空局の通達や審査要領の変更もなるべくリアルタイムで追っています。ここは自分で言うのもなんですが、お客さんにとっては大事な判断基準だと思うので書いておきます。「行政書士 ドローン」で検索して上位に出てくる事務所が必ずしも最新情報を把握しているとは限らないので、問い合わせ時に「2025年3月の改正は対応されてますか」くらいは聞いてみてもいいかもしれません。

以上、ドローンの飛行許可申請について、なるべく実務寄りの情報をまとめました。航空法の改正は頻繁に行われているので、この記事の情報も将来的には変わる可能性があります。最新の情報は国土交通省のホームページか、DIPS2.0のお知らせ欄を確認してください。何回も同じようなことを書いてしまいましたが、「機体登録≠飛行許可」「100g未満でも条例で飛ばせない場所がある」「飛行計画通報を忘れるな」この3点だけは本当に覚えて帰ってもらえたらと思います。

あと書き忘れていたんですが、2025年3月24日の改正でもうひとつ大きな変更がありまして、飛行許可承認の申請時に「飛行の安全を確保するために必要な体制」の記載方法が簡素化されています。以前は飛行マニュアルの独自作成が推奨されるケースが多かったのが、航空局標準マニュアルの適用範囲が広がって、多くの飛行形態で標準マニュアルのまま申請が通るようになった。これは申請者にとってはかなり楽になった点で、私の体感でも補正率が減ったと感じています。ただし催し物上空や150m以上の高高度飛行など、リスクの高い飛行については依然として独自マニュアルの作成が求められることがあるので、全部が簡素化されたわけではありません。そこは誤解のないようにしてもらえたらと。