経営戦略

合同会社の定款の作り方|株式会社との違いと「書かないと困ること」を行政書士が解説

本記事は、当事務所の代表行政書士が実務に基づき執筆しています。

合同会社の定款は、株式会社の定款と比べて自由度が高い。公証役場での認証も不要。だから「テンプレートをダウンロードしてきて、社名と住所だけ書き換えればOK」と思っている方が多いんですが、実際にはそう簡単な話ではありません。

自由度が高いということは、「何を書くか」「何を書かないか」の判断を自分でしないといけないということです。株式会社の定款は会社法でかなりの部分が決まっていますが、合同会社は定款で自由に設計できる範囲が広い。自由に設計できるということは、逆に言えば、設計を間違えたときのリスクも自分で負うということです。

この記事では、合同会社の定款に何を書くべきか、各条文がなぜ必要なのかを説明していきます。「テンプレートの書き方」ではなく「なぜそう書くのか」にフォーカスします。一人で合同会社を作る方にも、パートナーと一緒に作る方にも、実務上知っておいてほしいことをまとめました。行政書士として定款の作成に関わってきた中で、「もっと早く知りたかった」と言われることが多い内容を中心に書いています。

そもそも合同会社の定款は株式会社と何が違うのか

そもそも合同会社の定款は株式会社と何が違うのか

合同会社と株式会社の定款、最も大きな違いは「公証人のチェックが入るかどうか」です。

株式会社は定款を作成した後に、公証役場で公証人の認証を受ける必要があります。公証人が内容をチェックして「法的に問題ない」とお墨付きをくれる手続きです。手数料は3万〜5万円(資本金の額による)。2024年12月の改定で一定条件を満たせば1.5万円に下がりましたが、いずれにせよお金と時間がかかる。

合同会社はこの認証が不要です。定款を作成したら、そのまま法務局に設立登記の申請を出せる。手数料ゼロ、公証役場に行く必要もない。公証役場の予約待ちもないので、設立にかかる時間も短くて、最短1〜2週間で登記完了まで行けます。

ここだけ聞くと「合同会社の方が楽でいいじゃないか」と思えるんですが、認証が不要ということは公証人が定款の内容をチェックしてくれないということでもあります。株式会社なら公証人が「この条文はおかしい」「記載が不足している」と指摘してくれる。合同会社にはそのセーフティネットがない。間違った内容の定款をそのまま法務局に出して、設立登記が通ってしまうこともある。通った後に問題が発覚すると、定款変更の手続きが必要になります。

もう一つの大きな違い。株式会社は「所有と経営の分離」が原則で、出資する人(株主)と経営する人(取締役)が別でもいい。合同会社は「出資者=経営者」が原則です。社員(出資者のこと)がそのまま業務を執行する。この構造の違いが、定款の書き方に直接影響してきます。

株式会社では「取締役を何人置くか」「取締役会を設置するか」といった機関設計を定款で決めますが、合同会社では「誰が業務執行社員になるか」「誰が代表社員になるか」を定款で決める。ここの設計次第で、会社の意思決定の方法がまったく変わってくるわけです。

費用面の違いも整理しておきます。

株式会社の法定費用:登録免許税15万円+定款認証手数料1.5万〜5万円+謄本手数料約0.2万円+収入印紙4万円(紙定款の場合)=約20〜25万円
合同会社の法定費用:登録免許税6万円+収入印紙4万円(紙定款の場合)=約6〜10万円

電子定款にすれば収入印紙4万円が不要になるので、合同会社は最安6万円で設立できる。この費用差が合同会社を選ぶ最大の動機になっている方は多いと思います。ただし費用だけで選んでいいかどうかは後で書きます。

合同会社の定款に書く内容──条文ごとに「なぜ必要か」を説明する

合同会社の定款に書く内容──条文ごとに「なぜ必要か」を説明する

ここからは定款の具体的な中身に入ります。ネット上の記事では「絶対的記載事項」「相対的記載事項」「任意的記載事項」の3分類で説明するのが定番ですが、分類の説明を読んでも実際に何を書けばいいかはよく分からないと思います。なので条文の順番に沿って、「この条文がなぜ必要なのか」を書いていきます。

【商号】
会社の名前です。「合同会社○○」または「○○合同会社」のどちらでもOK。株式会社と同じく、同一住所に同一商号の会社は登記できません。似た商号の会社が近くにあると混乱のもとなので、事前に法務局の商号調査簿で確認するか、国税庁の法人番号公表サイトで検索しておくことを勧めます。

一つ注意点。商号に使える文字はひらがな・カタカナ・漢字・ローマ字・アラビア数字と一部の記号に限られます。「&」や「'」は使えますが、「@」や「♪」は使えない。実際に「記号入りの商号で申請して却下された」という相談を受けたことがあります。

それと「合同会社」の位置は前でも後でもいいんですが、一度決めたら変更するには商号変更の手続き(登録免許税3万円)が必要になるので、最初によく考えてください。「合同会社ABC」か「ABC合同会社」か。個人的には後者の方が社名が先に来るので覚えてもらいやすいと思っていますが、好みの問題です。

【目的】
会社の事業内容です。定款の目的に記載のない事業は「定款の目的外」とされるリスクがあるので、将来やる可能性のある事業も含めて広めに書いておく方が安全です。

許認可を取る予定がある場合は、目的の文言に注意してください。たとえば古物商の許可を取りたいなら「古物営業法に基づく古物商」等の文言が必要。建設業許可なら「土木工事業」「建築工事業」等の具体的な業種名が入っている必要がある。設立サービスのテンプレートだと、許認可に対応した文言が選択肢にないケースがあります。

目的は多すぎても問題になることがある。「何でもやります」と言わんばかりに20個も30個も事業目的を並べている定款を見かけることがありますが、銀行口座の開設審査で「結局この会社は何をする会社なのか」と不審に思われるリスクはあります。5〜10個程度が一般的で、メインの事業を最初に書いて、将来の拡張余地として「前各号に附帯関連する一切の事業」を最後に入れておくのが定石です。

【本店の所在地】
最小行政区画(市区町村)まで書けば足ります。「神戸市北区」までで良くて、番地まで書く必要はない。番地まで定款に書いてしまうと、同じ市区町村内で本店を移転しただけでも定款変更が必要になるので、市区町村までにしておくのが実務的です。登記申請の際には具体的な所在場所(番地まで)を届け出ますが、定款に書くのは市区町村まで、というのがポイント。

バーチャルオフィスの住所を本店にする方も増えていますが、定款上は市区町村までの記載で構いません。将来バーチャルオフィスを変更する可能性があるなら、なおさら番地まで入れない方がいい。同じ市区町村内の移転なら定款変更不要、管轄外への移転なら定款変更が必要になります。

【社員の氏名又は名称及び住所】
出資者全員の氏名と住所を記載します。合同会社の「社員」は従業員のことではなく出資者のことなので、ここは間違えないでください。法人が社員になることもできます。その場合は法人の名称と本店所在地を記載。

【社員の全部を有限責任社員とする旨】
合同会社の社員は全員が有限責任社員です。「社員の全部を有限責任社員とする」旨を定款に書く必要がある。これは会社法576条で定められた絶対的記載事項で、書かないと定款自体が無効になります。テンプレートを使えばまず抜け落ちることはないですが、自分で一から書く場合は注意してください。

【社員の出資の目的及びその価額】
各社員が何をいくら出資するかを記載します。金銭出資なら「金100万円」のように。現物出資(パソコンや車など)も可能で、その場合は「別紙財産引継書記載のとおり」として別紙に詳細を書く方法が一般的です。

株式会社と違って合同会社は定款に出資額を直接書くので、増資する場合は定款変更が必要になります。この手間を嫌って最初から多めに出資する方もいますが、出資額=資本金の額になる(原則)ので、多すぎると法人住民税の均等割が上がる可能性がある。資本金1,000万円を超えると均等割の額が跳ね上がるので、そのラインは意識しておいた方がいいです。

なお出資の全額を資本金にする必要はなく、一部を「資本剰余金」として計上することもできます(会社計算規則44条)。資本金を低く抑えつつ実際の出資額は大きくしたい、という場合に使えるテクニックではありますが、定款にその旨を定める必要はなく、別途「資本金の額の計上に関する証明書」を法務局に出す形です。

ここまでが会社法576条に規定された絶対的記載事項。これを一つでも欠くと定款自体が無効で、法務局で設立登記が却下されます。

ここからは「書かなくても定款は有効だけど、書いておかないと困る可能性がある」項目です。

【業務執行社員】
社員が複数いる場合に、「誰が経営を担当するか」を決める条項。合同会社は原則として社員全員が業務執行権を持ちますが、定款で業務執行社員を限定することができます。

一人会社なら気にしなくていいんですが、2人以上で設立する場合はここが重要。全員に業務執行権があると、意見が対立したときに身動きが取れなくなることがある。「業務執行社員を○○とする」と定款で定めておけば、日常の業務はその人が判断できるようになります。

【代表社員】
代表社員は会社の代表権を持つ人です。業務執行社員が複数いる場合に、そこから代表社員を定めることができます。定めなければ業務執行社員全員が代表権を持つ。これも一人会社なら問題ないですが、複数社員の場合は定めておいた方がいい。

代表社員が2人以上いると、契約締結や銀行手続きで「どっちがサインするの」という混乱が起きることがあります。実務上は代表社員は1人に絞ることが多いです。

ちなみに合同会社の代表社員の肩書きは「代表社員」であって「代表取締役」ではない。名刺に「代表取締役」と書いている合同会社の方をたまに見かけますが、これは正確には間違いです。「代表取締役」は株式会社の役職名なので。対外的に「CEO」を使うのは法的には自由ですが、登記上は「代表社員」です。

【社員の加入・退社のルール】
ここが合同会社の定款で一番見落とされがちで、かつ一番トラブルになりやすい部分です。

社員の加入には原則として総社員の同意が必要(会社法604条)。退社については、各事業年度終了の6か月前までに退社の予告をすれば、事業年度末に退社できる(会社法606条1項)。これが会社法のデフォルトルールです。

問題は退社時の「持分の払戻し」。社員が退社すると、その社員の持分に相当する金額を会社が払い戻す必要があります(会社法611条)。金額は退社時点の会社の財産状況に基づいて計算されるので、会社の純資産が大きければ払戻額も大きくなる。

これが実務上かなり厄介で、「パートナーと2人で合同会社を作ったが仲違いして片方が退社、持分の半分を払い戻す現金がない」というケースを見たことがあります。株式会社なら株式を第三者に譲渡すれば済む話が、合同会社だと持分の譲渡には他の社員全員の同意が必要(会社法585条)。結局会社が払い戻すしかなくなって、資金繰りが詰まる。

だから定款で退社時の持分払戻しについてルールを決めておくことが大事です。たとえば「退社時の持分は出資額を上限とする」とか「持分の評価方法は簿価とする」とか。こういう定めは定款に書いておかないと、デフォルトの会社法ルール(退社時の純資産ベース)が適用されます。

一人会社なら退社の問題は起きないので気にしなくていい。ただし将来パートナーを入れる可能性があるなら、最初から退社条項を整備しておいた方が後で揉めません。

【利益分配の割合】
定款に何も書かなければ、利益分配は出資割合に比例します(会社法622条)。100万円ずつ出資した2人なら50:50。ただ合同会社の強みは、定款で出資割合と異なる利益分配を定められること。「出資は同額だけど、実務は一方が多くやるから7:3で分配する」みたいなことが可能です。

株式会社だと、株式の種類をいじらない限りは1株あたりの配当は同じなので、こういう柔軟な分配は難しい。合同会社を選ぶメリットの一つです。

ただし利益分配の割合を定款で定めた場合、その割合が社会通念上不合理だと税務上の問題が生じる可能性はあります。「出資90:10、分配10:90」のような極端な設定は、税務調査で突っ込まれるリスクがある。合理的な根拠──たとえば業務執行の負担割合──が説明できる範囲で定めるのが無難です。

【事業年度】
いつからいつまでを1年度にするか。個人事業主時代は1月〜12月が自動的に事業年度ですが、法人は自由に決められます。4月〜3月でも、7月〜6月でもいい。

よくある選択は、設立月を事業年度の開始月にして、決算月をなるべく先に延ばすパターン。設立1期目がなるべく長くなるようにすると、消費税の免税期間を最大限に活用できる可能性がある(ただし2023年10月のインボイス制度開始以降は、適格請求書発行事業者の登録をするなら免税の話は関係なくなります)。

もう一つ実務的なアドバイスとして、繁忙期に決算月を持ってこない方がいいです。3月決算は日本の企業に多いですが、その分税理士も忙しい。決算申告の対応が雑になったり、依頼料が割増になることもあります。7月とか10月とか、税理士の繁忙期を外した決算月にしておくと、申告の対応がスムーズになりやすいです。

定款で決めなかったらどうなるか

定款で決めなかったらどうなるか

合同会社の定款設計で一番怖いのは、「テンプレートをそのまま使って、何も考えずに設立してしまう」パターンです。

会社法には合同会社に関して「定款に別段の定めがある場合を除き」という条文がたくさんあります。これは「定款で別のルールを定めてもいいけど、何も書かなければこのデフォルトルールが適用されますよ」という意味です。

問題は、デフォルトルールが常に自分にとって都合がいいとは限らないこと。

いくつか例を挙げます。

定款変更の要件。デフォルトでは「総社員の同意」が必要(会社法637条)。3人で合同会社を作った場合、定款を変更するには3人全員の同意がいる。1人でも反対すれば変更できない。定款で「社員の過半数の同意で変更できる」と定めておけば、2人の同意で変更が可能になります。

持分の譲渡。デフォルトでは「他の社員全員の承諾」が必要。これも、定款で「代表社員の承認があれば足りる」等と定めることができる。

業務の意思決定。業務執行社員が2人以上いる場合、デフォルトでは「過半数の一致」で決定(会社法590条2項)。2人だと過半数=全員一致なので、意見が割れたら何も決められなくなる。いわゆるデッドロックです。

一人会社ならこれらのルールは気にしなくていいです。自分しかいないから全員の同意も過半数も関係ない。ただ複数人で設立する場合、テンプレートをそのまま使うと「全員一致」がデフォルトになっている項目が多いので、意見の対立が起きたときに動けなくなるリスクがある。

だから、複数人で合同会社を作るなら、定款のテンプレートをそのまま使うのではなく、各条項の意味を理解した上で自分たちに合った設計をする必要があります。ここは正直、自分たちだけでやるのはなかなか難しい。行政書士や司法書士に定款の設計を相談した方がいい場面です。

余談ですが、株式会社の場合はこのへんの問題があまり起きません。株式会社は会社法の強行規定(定款でも変更できないルール)が多くて、逆にそれがセーフティネットになっている。取締役会の設置義務(大会社の場合)や株主総会の権限など、ガチガチに決まっているからこそ、テンプレート通りに作っても大きく外すことが少ない。合同会社はその逆で、自由度が高いぶん、何も考えずにテンプレートを使うと穴が空いたまま設立してしまうリスクがあります。

電子定款と紙定款──4万円の差

電子定款と紙定款──4万円の差

電子定款にすれば収入印紙4万円が不要になる。これは株式会社と同じです。ただし自分で電子定款を作成するにはマイナンバーカード、ICカードリーダー、Adobe Acrobat Pro等の準備が必要で、一回きりの作業のためにこの環境を整えるのは正直コスパが悪い。

合同会社は認証不要なので、「電子定款を自分で作ってPDFに電子署名する」だけで済む──と聞くと簡単に聞こえますが、登記・供託オンライン申請システムの操作画面がかなり分かりづらくて、途中で挫折する方を何人も見てきました。

行政書士に電子定款の作成代理を依頼すれば1万〜2万円程度。4万円の印紙代が不要になるので、差し引き2〜3万円は浮きます。設立費用をできる限り抑えたいなら、ここは専門家に任せた方が効率的です。

設立サービス(freeeやマネーフォワード)でも電子定款に無料で対応してくれますが、これは提携行政書士・司法書士が電子署名を行う形で、設立後の有料プラン契約が前提のビジネスモデルです。詳しくは会社設立費用の記事で書いたのでそちらを参照してください。

ところで合同会社の場合、紙定款でも4万円の収入印紙を節約するために電子定款にするメリットは大きいです。株式会社の場合は電子定款にしても認証手数料1.5万〜5万円は別途かかりますが、合同会社は認証自体が不要なので、電子定款にするだけで4万円がまるまる浮く。合同会社の法定費用が最安6万円で済む理由の半分は、この「認証不要+電子定款で印紙不要」の組み合わせです。

実際の作り方

実際の作り方

定款を作る方法は大きく3つあります。

一つ目は法務省のひな形をベースにする方法。法務省のウェブサイトに合同会社の定款のモデルが掲載されています。これをダウンロードして、自社の内容に書き換えていく。最も費用がかからない方法ですが、ひな形の各条項が何を意味しているかを理解していないと、不要な条項をそのまま残したり、必要な条項を入れ忘れたりします。

二つ目はfreeeやマネーフォワード等の設立サービスを使う方法。画面の案内に従って入力していけば定款が自動生成されるので、手軽ではあります。ただ、設立サービスのテンプレートは「最大公約数的な定款」なので、合同会社特有の設計──業務執行社員の限定や退社時の持分払戻しルール等──を細かく設定できないことが多い。一人会社ならこれでも大抵は問題ないですが、複数社員の場合は注意が必要です。

三つ目は行政書士に定款の作成を依頼する方法。報酬相場は5万〜10万円程度。定款の設計からやってくれるので、退社条項や利益分配の設計など、テンプレートではカバーできない部分まで対応してもらえる。許認可を取る予定がある場合は、事業目的の文言調整も含めて相談できるメリットがあります。

どの方法を選ぶかは、社員の人数と事業の複雑さによります。

一人会社でシンプルな事業なら、正直いって設立サービスか法務省のひな形で十分だと思っています。定款の設計で揉める相手がいないので、デフォルトルールのままでも困る場面はほとんどない。

2人以上で設立する場合、あるいは将来パートナーを入れる予定がある場合は、定款の設計にお金をかけた方がいいです。退社時の持分払戻し、意思決定のルール、利益分配の割合。この3つは後からトラブルになりやすい部分なので、設立時にちゃんと設計しておく価値がある。

許認可が必要な事業の場合は、そもそも行政書士に相談してから定款を作った方がいいです。事業目的の文言ミスで許認可が取れない→定款変更に登録免許税3万円+手間、という無駄なコストが発生しますから。

合同会社を選んでいい人、株式会社にしておくべき人

合同会社を選んでいい人、株式会社にしておくべき人

定款の話から少し逸れますが、そもそも合同会社を選んでいいのかという問題があるので触れておきます。

合同会社が向いているのは、ECやウェブサービスなど会社名が前面に出ない事業。フリーランスの法人化で取引先が「法人であればOK」というスタンスの場合。不動産管理法人やマイクロ法人のように節税・社会保険最適化が目的のケース。

株式会社にしておいた方がいいのは、BtoBで大企業との取引がメインの事業。将来の資金調達や上場を視野に入れている場合(合同会社は上場できません)。人材採用で会社の見え方が重要な事業。

「迷ったら株式会社」というのが実務で設立に関わっていての私の感触です。合同会社→株式会社への組織変更は手続き的に可能ですが、登録免許税6万円以上+手間がかかる。設立時の14万円の差を惜しんで後から6万円払う、というのは本末転倒です。

ただし一人で回す事業で、取引先も個人相手、資金調達の予定もない。こういう場合に株式会社を選ぶ理由はほとんどない。合同会社で十分です。14万円は14万円ですから。

あと見落としがちな違いとして、役員の任期があります。株式会社の取締役は任期があって(原則2年、最長10年まで延長可)、任期が来るたびに重任の登記が必要です。登録免許税1万円。合同会社の業務執行社員には任期がないので、この費用がかからない。10年に一度とはいえ、毎回1万円かかるのを煩わしいと感じる人もいます。ランニングコストの差は設立費用の14万円だけではないということです。

定款の変更が必要になったとき

定款の変更が必要になったとき

合同会社の定款変更は、原則として総社員の同意が必要です(会社法637条)。定款で要件を緩和している場合はその定めに従います。

変更内容によっては法務局での変更登記も必要です。商号変更、目的変更、本店移転、社員の加入・退社、代表社員の変更など。変更登記には登録免許税がかかります。

商号変更:3万円
目的変更:3万円
本店移転(管轄内):3万円
本店移転(管轄外):6万円
社員の加入・退社:1万円

定款変更で一番多い相談は「事業目的の追加」です。設立時に入れ忘れた事業を後から追加するケース。許認可の要件を満たすために目的を追加する場合もある。3万円と手間がかかるだけで、手続き自体は難しくないですが、最初から入れておけば不要だった費用ではあります。

定款の原本は法務局に届け出るわけではなく、会社が自分で保管するものです。紛失したという相談もたまにあります。。株式会社なら公証役場に定款の原本が保管されているので再交付を受けられますが、合同会社は認証を受けていないので公証役場に原本がない。つまり、自分で紛失したら終わりです。

電子定款ならPDFデータを複数箇所にバックアップしておく。紙の定款ならコピーを取って別の場所に保管しておく。地味な話ですが、定款原本がないと銀行口座の開設、許認可の申請、補助金の申請、さまざまな場面で困ることになるので、保管だけは確実にやってください。

最後に

合同会社の定款は、株式会社より自由度が高い反面、自分で判断しなければいけない部分も多い。一人会社ならテンプレートで十分対応できますが、複数人で設立する場合は退社時の持分払戻し、意思決定のルール、利益分配の設計をきちんとやっておかないと、後からトラブルになります。

「安いから合同会社」「テンプレートがあるから自分でできる」──これ自体は間違ってないんですが、テンプレートの各条文が何を意味しているかを分かった上で使ってほしいと思います。書いてあることの意味が分からないまま提出してしまうと、あとから「こういうつもりじゃなかった」となっても定款変更の手続きが必要になる。分からない部分があれば、設立前に相談してください。定款の設計だけでも対応できますので。

合同会社の定款設計、一人で悩まなくて大丈夫です

合同会社の定款設計、一人で悩まなくて大丈夫です

一人会社か複数人か、許認可は必要か、退社時のルールはどうするか。定款の中身は事業の設計そのものです。テンプレートで対応できる範囲を超えるなら、専門家に相談した方が結果的に安く済みます。

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