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示談書の書き方とテンプレート|交通事故の示談書を自分で作るときに行政書士が伝えたいこと

本記事は、当事務所の代表行政書士が実務に基づき執筆しています。

2ヶ月前くらいに、北区にお住まいの40代の男性から相談がありました。スーパーの駐車場で、隣の車がドアを開けた拍子にぶつけられた。いわゆるドアパンチってやつです。で、その場では警察を呼ばなかったらしい。「大した傷じゃないし」と思って、連絡先だけ交換して別れた。

翌日にディーラーに持っていったら見積もりが15万円。「え、こんなにかかるの」と本人もびっくりしたそうですが、最近の車は板金塗装だけじゃ済まなくて、ドアの中のセンサーやら配線やらが絡むから高くなるんですよね。で、相手に連絡したら「保険の等級下がるから自費で払いたい。示談にしてほしい」と。

ここまではよくある話なんですが、問題はこの後。相手が「15万は高すぎる。10万にしてくれ」と言い出した。見積もりはディーラーの正規のもので、こっちが吹っかけてるわけじゃない。でも相手は納得しない。それで揉め始めて「じゃあやっぱり保険使う」と言われて、「いやそれなら最初から保険使ってくれよ」という状態になった。

結局、相手が見積書を自分の知り合いの板金屋に見せて「ディーラーは高いだけ、12万が妥当」と言われたらしく、最終的に13万円で手打ちにすることになった。ここまで2週間。で、ようやく金額が決まったところで「口約束だけじゃ不安だから書面にしたい」と相談に来られたわけです。

この手の話、うちでは月に2〜3件は来ます。年間で考えると30件弱。ただ正直に言うと、このケースは相談に来るのがちょっと遅かった。見積もりで揉める前に来てくれていれば、「15万の見積書をベースに示談書を作りましょう」で済んだ。もっと言うと、警察に物損事故として届出していなかったのも痛い。事故証明書があれば「事故があった」こと自体は公的に証明できるし、仮に相手がバックレたとき、少額訴訟で使える証拠にもなる。

駐車場の軽い接触だと「大袈裟にしたくない」という心理が働くのは分かるんですが、人身じゃなくても警察に届けておくに越したことはない。ドラレコがなくて目撃者もいない場合、事故の存在を証明するものが当事者の証言だけになっちゃいますからね。。

まあこれは示談書の書き方の前段の話なんですが、示談書を作る前の段階で既にやらかしている人が多いので、あえて長めに書きました。本題に入ります。

そもそも示談書って何なのか

そもそも示談書って何なのか

民法695条に和解契約の規定があります。当事者が互いに譲歩してその間の争いをやめることを約する契約。これを紙に書いたのが示談書です。名前は「和解書」でも「合意書」でも何でもよくて、呼び方で法的効力に差はない。保険会社が使う「免責証書」というのも本質は同じもの。

大事なのは、双方が署名捺印した示談書は契約と同等の拘束力を持つということです。「紙切れ」じゃない。裁判になったら極めて強い証拠になるし、逆に言うといい加減な内容で作ると、そのいい加減さに縛られる。

示談書がないとどうなるか。去年の話ですが、住宅街の路地で自転車同士がぶつかって、片方が転倒して手首を捻挫した。加害者のほうが「すいません、治療費3万円払います」とその場で言って、翌日に現金書留で送った。ここまでは誠実な対応だったんですよ。むしろ立派。問題はその1ヶ月後。被害者から「実は首も痛くなってきた。整形外科に通ってる。追加で20万払ってくれ」と連絡がきた。

加害者としては「え、3万で終わったんじゃないの」と思うわけですが、3万円で全部解決という合意を証明するものが何もない。現金書留の控えはあるけど、それは「3万円送った」ことの証明であって「3万円で全て解決」の証明にはならない。結局、揉めに揉めた末に10万追加で払うことになった。元々は誠実に対応していた人が、書面を残さなかったがために余計に10万円取られた。

示談書を作って清算条項——「本件に関する一切の債権債務がないことを確認する」——を入れていれば、この追加請求はそもそも成立しなかったわけで。たった一文の有無で10万円の差が出る。

ただ、この話にはもう一つの見方があって。被害者側からすると「3万円で清算してしまったら、後から本当に首が痛くなっても請求できない」ということになる。だから清算条項にサインするタイミングと内容は、被害者側も慎重に判断すべき。安易に「早く終わらせたいから」でサインすると後悔する可能性がある。清算条項は加害者を守る条項でもあり、被害者を縛る条項でもある。この両面を理解してから使わないと危ない。

交通事故の示談書に何を書くか——物損の場合

交通事故の示談書に何を書くか——物損の場合

ここは正直、そんなに難しくないです。書くべきことは決まっている。

事故の特定(日時・場所・当事者・車両ナンバー)、事故概要と過失割合、損害の内容と賠償金額、支払方法と期限、清算条項、署名捺印。以上。A4で1枚、多くて2枚。

ただ、「書くべきことが決まってる」からこそ、ネットでテンプレを拾ってきてそのまま使おうとする人が多いんですが、ここで声を大にして言いたいのは、テンプレの条項の意味を理解しないまま使うのが一番危ないということ。

具体的に何が起きるかというと、テンプレに「後遺障害留保条項」が入ったままのやつをそのまま使ってしまうケース。物損の示談書に後遺障害留保が入っているということは、「後から人身の請求が来る余地を残す」ということです。加害者側にとってはリスクでしかない。なのに意味が分からんまま入れてしまう。逆に、清算条項が入っていないテンプレもある。これだと示談書としての意味が半減する。

冒頭のドアパンチの方は結局うちに依頼してくれたんですが、費用は2万円(税別)。13万円の話で2万円かけるかどうかは人によるでしょうけど、この方は「素人が作って後から穴をつかれるのが怖い」とおっしゃってた。実際、ネットのテンプレで自作した示談書を持ち込まれて「これで大丈夫ですか」とチェックを頼まれることもあるんですが、8割くらいの確率で何かしら抜けがある。過失割合が書いてない、支払期限が曖昧、清算条項の文言がおかしい、とか。チェックだけで5,000円いただいてますが、直すとなると結局作り直しに近くなるので、最初から依頼してくれたほうがお互いの手間は少ないです。

ちなみに示談書は2通作成して双方1通ずつ保管。コピーじゃなくて2通とも署名捺印した原本。たまに1通だけ作って相手に渡して手元に何もない人がいますが、それは流石にまずい。

人身事故の示談書は正直ハードルが高い

人身事故の示談書は正直ハードルが高い

物損は単純ですが、人身が絡むと途端にややこしくなる。治療費、通院交通費、休業損害、入通院慰謝料。場合によっては後遺障害慰謝料と逸失利益。全部金額を確定させて記載しないといけない。

しかも慰謝料の算定基準が自賠責・任意保険・弁護士の3種類あって、同じ怪我でも基準によって金額が倍以上違うことがある。自賠責基準だと入通院慰謝料は1日4,300円×2×通院日数で計算するんですが、弁護士基準(裁判所基準)だと通院3ヶ月で53万円とか、全然違う数字が出てくる。どの基準を使うかで被害者の受取額が全然変わるわけで、ここを素人判断で決めるのはかなりリスキーです。

じゃあ保険会社を通さない人身事故の示談ってどういう場面で起きるかというと、典型的なのは加害者が任意保険に入っていない場合。自賠責はあるけど任意保険なし、という状態。自賠責の被害者請求で120万円までは出ますが、それを超える損害は加害者本人に請求するしかない。その部分について当事者間で示談書を作ることになる。

去年の秋に「自転車で人を転倒させてしまった、治療費と慰謝料を払いたいがいくらが適正か」という相談がありました。通院5日、治療費4万2千円。自賠責基準で計算すると4,300円×2×5日=43,000円。合計8万5千円の示談書を作成しました。これくらいの軽微な人身で双方納得済みなら行政書士の出番になる。弁護士に頼むと費用倒れになる金額帯なので。

ただしこれは「双方が金額に納得している」前提の話です。後遺障害の可能性があるとか、相手が納得してなくて交渉が要るとか、通院が3ヶ月以上続いているとか、そういうケースは行政書士じゃなく弁護士に行ってください。行政書士は書面の「作成」ができるだけで、示談「交渉」の代理権がない。ここは明確に使い分けてほしいし、うちでも最初の相談時にはっきり伝えるようにしてます。

ついでに言うと、人身事故の損害賠償額って、通院が終わらないと確定しない。治療中に「もう面倒だから50万で全部示談にしよう」とか書いてしまうと、通院が長引いて治療費が50万を超えた場合に被害者が自腹を切ることになる。清算条項で封じられてるから追加請求できない。物損は先に示談していいけど、人身は治療終了まで待つ。これ鉄則です。

で、その「物損だけ先に示談する」場合に絶対に気をつけないといけないのが清算条項の書き方なんですが——この話は前のセクションで少し触れたので繰り返しになりますが、もう少し突っ込んで書かせてください。示談書の他の部分は最悪間違っていても後から修正がきくことが多いんですが、清算条項だけは一発勝負なので。

「甲乙間には本件に関し、本示談書に定めるもののほかに何らの債権債務がないことを相互に確認する」。この一文が入ると、今後この事故について金銭を請求する権利が双方ともなくなる。もう追加請求はできない。

この「終わり」の重みを分かっていない人が多い。2年前に来た相談で一番印象に残ってるのが、追突事故の被害者で通院中の30代女性。加害者側(無保険)から「今すぐ50万払うから示談してくれ」と言われて、「50万もらえるなら」とサインしてしまった。清算条項入り。その後、MRI撮ったら頚椎のヘルニアが見つかって、後遺障害14級に該当する可能性があった。14級の後遺障害慰謝料は弁護士基準で110万円前後。逸失利益も入れたら200万近く取れたかもしれないのに、50万で全部清算してしまった。

この方は「50万で清算したことを取り消せないか」と相談に来られたんですが、正直厳しいと思いますとしか言えなかった。錯誤取消し(民法95条)の主張は不可能ではないですが、「署名時に後遺障害の可能性を認識していなかった」ことを立証するのは容易じゃない。結局、弁護士を紹介して任せましたが、あの案件がどうなったかは聞いていません。

だからこそ何度でも言いますが、通院中に清算条項入りの示談書にサインしてはいけない。物損と人身が両方ある事故で、物損だけ先に示談するのは構わない。でもその場合、「本示談は物損に関するものであり、人身損害については別途協議する」と明記すること。

で、後遺障害留保条項。「後日、本件事故に起因する後遺障害が判明した場合は、本示談書の内容にかかわらず別途協議の上で解決する」。これは被害者側を守る条項です。物損だけの示談でも、翌日からむち打ち症状が出ることは珍しくないので、念のため入れておいたほうがいいと私は思っている。

ただ——ここが実務の面白いところなんですが——加害者側から依頼を受けた場合、この条項は入れたくないわけです。入れたら「いつまでも追加請求の余地が残る」から。示談書って結局、甲と乙の利害が対立する文書なんですよね。どっちの立場で作るかによって、入れるべき条項が変わる。テンプレートには「標準的な条項」が全部入ってますが、その「標準」が自分にとって有利なのか不利なのか判断できないまま使うのが一番危険。

もう一つ補足。清算条項の対象範囲を限定する書き方もあります。「本件物損事故に関し」と書けば、清算されるのは物損部分だけで人身は対象外。「本件に関する一切の」と書けば物損も人身も全部含む。この一言の違いがでかい。テンプレートではだいたい「一切の」と書いてあるので、物損だけ先に示談したい場合は意識的に範囲を絞る必要がある。

保険を通さないケースが増えている実感

保険を通さないケースが増えている実感

駐車場の物損で保険使わないケースはさっき書いた通りですが、もう一つよくあるのが「相手が来週払うと言ったきり連絡が取れなくなった」パターン。去年来た相談がまさにこれで、LINEでは「修理代お支払いします」「来週振り込みます」とやり取りしてたのに、翌週から既読スルー。2回催促してブロックされた。LINEの画面を証拠にして少額訴訟に持ち込むことにはなったんですが、メッセージに具体的な金額が出てきてなくて、「見積書の画像を送った=その金額で合意」と言えるかどうかで揉めた。示談書1枚あれば内容証明送って終わりだったのに、書面がないとこうなる。

ちなみに少額訴訟の話が出たのでついでに書いておくと、60万円以下の金銭請求なら簡易裁判所で少額訴訟が使えます。手数料は請求額10万円で1,000円、30万円で3,000円。原則1回の期日で判決が出るので弁護士なしでも回せる。ただし相手が通常訴訟への移行を求めたら少額訴訟では審理できなくなるので、万能ではない。それでも「示談書なし+相手がバックレた」場合の最後の砦としては使える手段です。話が逸れました。

それ以外で最近相談が増えてるのが自転車事故。兵庫県は2015年に自転車保険の加入を義務化しましたけど、罰則がないので加入してない人が実際はかなりいる。条例で義務って言われてもねえ、罰則ないなら入らんでしょと思ってる人の気持ちも分からんではないですが、いざ事故が起きると当事者同士で直接やり合うことになるので本当に大変です。

自転車同士の事故で両方とも保険なし。これ揉めますよ、本当に。「そっちが飛び出してきた」「スマホ見てたのはそっちだ」。目撃者がいなければ完全に水掛け論。で、過失割合を争い始めると泥沼になる。自動車同士の事故なら別冊判例タイムズ38号に類型ごとの基準があるんですが、自転車同士は判例の蓄積が薄いし、そもそも自転車事故で弁護士入れて過失割合を争うほどの損害額じゃないことが多い。修理代2万円で弁護士に相談しても費用倒れです。

こういうケースでは、正直なところ過失割合を厳密に決めるより、「甲が乙に対し○万円を支払うことで本件を解決する」という包括的な書き方で早めに手打ちにしたほうが、双方にとって負担が少ない。過失割合にこだわって半年揉めるより、多少のモヤモヤを飲み込んで示談したほうが時間のコスパはいいです。

あと地味に困るのが自転車の「車両特定」の書き方。自動車ならナンバーで一発なんですけど、自転車は防犯登録番号があればまだいいとして、なければメーカー・色・車体番号(フレームの底に刻印されてるやつ、見つけるのに苦労する)で書くしかない。先月作った示談書では「GIANT社製クロスバイク、白色、車体番号GE2○○○○○」みたいに書きました。自動車事故のテンプレには当然こんな書き方は載ってない。

あと無保険車両との事故。自賠責すら切れてる相手。こういう人は資力がないことが多い。分割払いの示談書を作るとして、期限の利益喪失条項(1回でも飛ばしたら残額一括)と遅延損害金(年14.6%)は必須で入れる。可能なら公正証書にしたい。でも正直、全額回収できるかは五分五分です。それでも書面がないよりマシ。

ここで分割払いの示談書を作るときの実務的な注意点を少し。月5万円×6回で30万、みたいな取り決めをする場合、支払日を「毎月末日」とか「毎月25日」と具体的に決める。そして「2回連続で支払いを怠った場合は期限の利益を喪失し、残額を直ちに一括で支払う」という条項を入れる。遅延損害金の年率は14.6%が多い(消費者契約法の上限)。

あともう一つ、相手の勤務先と給与日は把握しておく。示談書本文に書く必要はないですが、メモとして控えておく。万が一の強制執行で給与債権を差し押さえるのが一番確実な回収手段なので。いやらしい話ですけどね。ただ現実として、無保険で車に乗ってるような人から回収するのは、書面があっても大変なんです。示談書は「取れる可能性を残す」ための文書であって、「確実に取れる」保証ではない。この点は依頼者にも正直に伝えるようにしてます。

公正証書にするかどうか、そして誰に頼むか

公正証書にするかどうか、そして誰に頼むか

公正証書にして強制執行認諾文言を入れると、相手が払わないとき裁判なしで差押えできる。普通の示談書だと裁判→勝訴→強制執行の2段階。費用は100万円以下で公証人手数料5,000円。安い。ただ全部公正証書にすべきかというと、そうでもなくて、一括払い済みなら不要だし金額10万以下だと費用対効果が合わない。30万以上の分割で相手の信用に不安があるときに使う、くらいの感覚でいいと思ってます。

神戸なら三宮と明石に公証役場があります。予約から1〜2週間かかるので急ぐ場合はまず普通の示談書で合意を固めて、後日あらためて公正証書化する二段階方式が現実的。あと公正証書を作るには相手にも公証役場に来てもらう必要があるんですが(代理人でも可)、非協力的な相手ほどこういうのに応じてくれないのが現実。制度の限界というか、まあしょうがないですね。

で、示談書を誰に頼むかという話。相手と話がついていて書面化だけなら行政書士で足りる。交渉が必要なら弁護士。基本はこれだけなんですが、もう少し補足します。

行政書士には示談交渉の代理権がない。弁護士法72条で非弁行為として禁止されてます。だから「相手と揉めてるんですが間に入ってくれませんか」と言われても、法律上できない。「じゃあ行政書士に何ができるんですか」と聞かれると、「双方が合意した内容を法的に正しい書面にまとめること」が仕事の範囲。つまり、交渉は当事者同士でやってもらって、合意ができたらうちに来てくれ、ということになる。

内容証明郵便の作成自体は行政書士の業務範囲に入りますが、「払わないなら訴えます」みたいな法的措置を示唆する内容になると、これは交渉の一環と見なされる可能性がある。このあたりのグレーゾーンには触れたくないので、相手方への請求が必要な案件は弁護士に任せてます。

うちでは、話がこじれそうな案件は最初から弁護士を紹介してます。自分の仕事を増やしたくてグレーな案件を受けても、依頼者に不利益を与えるだけなので。

費用の話もしておくと、行政書士に示談書作成を頼むと2〜5万円。公正証書まで含めて5〜8万円。弁護士なら交渉込みで着手金10〜20万円+成功報酬が相場。修理代15万の物損で弁護士に20万払うのは割に合わないでしょう。逆に後遺障害が絡んで数百万の話になるなら弁護士の着手金なんて安いもの。要は金額とケースの複雑さで使い分ければいい話で、「行政書士のほうが安いから全部行政書士で」というのは間違い。できないことはできない。これだけ。実際にうちから弁護士に紹介した案件で結果的に数百万回収できたケースもあるので、最初から弁護士に行ってたほうが良かったですよねという話。逆に、弁護士に行ったけど「これ行政書士で十分ですよ」と言われて回ってきた案件もある。お互い様です。

最後に一つだけ。示談書を作るタイミングの話。冒頭のドアパンチの方は事故から4週間後に示談書を完成させましたが、うち2週間は見積もりで揉めてた期間なので、実質的には合意後2週間で書面化。これはまあ普通のペースだと思います。

ちょっと怖いのは、事故直後の混乱状態で「もう何でもいいから早く終わりにしたい」という気持ちで、相手の言い値で示談書にサインしてしまうケース。一度署名したら原則取消しはできません。民法95条の錯誤とか96条の詐欺で取り消せる場合もあるにはあるんですが、立証のハードルはかなり高いです。最低でも1日は頭を冷やしてからサインしてください。事故の日に示談書を完成させる必要なんてどこにもないんですから。

あと、稀にですが「その場で示談書を書いてサインしてくれ」と迫ってくる加害者がいます。修理代を払いたくないから、被害者が冷静になる前に安い金額で合意させようとする。こういう相手に出くわしたら、その場では絶対にサインしないこと。「持ち帰って確認します」でいい。逆にそこまで急かしてくる時点で相手の態度に問題があるので、保険会社を通すか弁護士に相談したほうが安全。そういうもんだと思ってください。

逆に時間をかけすぎるのもよくなくて、1ヶ月以上放置すると相手の「払わなきゃ」という意識が薄れてくる。「あの件どうなりましたっけ?」と連絡しても「もう謝ったじゃないですか」とか言い出す人もいる。事故から1〜2週間、遅くても1ヶ月以内に示談書まで仕上げるのが理想です。

冒頭のケースは見積もりトラブルで時間食いましたが、最終的には13万円が振り込まれて終了。あの場で口約束だけで終わらせなくてよかったと思います。ただ一つだけ引っかかっているのは、警察に届けてなかった件。これについては「今からでも届けたほうがいいですか」と聞かれたんですが、事故から既に1ヶ月近く経っていて、傷の写真も修理前に撮っていなかった。事故証明書なしでも示談書は作れるし法的効力にも影響しないんですが、万が一相手が「そもそも事故なんてなかった」と開き直った場合に、事故の存在自体を公的に証明する手段がない。今回は相手が素直に払ってくれたから問題にならなかったけど、事故直後に警察に連絡する、現場と傷の写真を撮る、この2つだけは習慣にしておいてほしいと思ってます。示談書の話からは外れますが、何回も同じ失敗を見てるので書かずにいられなかった。