経営戦略

経営管理ビザ改正で何が変わった?資本金3000万円と5つの新要件

本記事は、当事務所の代表行政書士が実務に基づき執筆しています。

経営管理ビザ改正

「ネットで調べたら、経営管理ビザは資本金500万円で取れると書いてあったので、そのつもりで準備していたのですが」

とご相談されたのは、36歳のITエンジニア出身の起業家さまでした。日本語はN1相当で会話に支障はなく、日本での滞在歴は通算3年ほどで、奥さんとお子さんと一緒に来日し、東京でITコンサルとシステム開発の会社を立ち上げたい、ということでした。事業計画もそれなりに具体的でした。

ただ、その「資本金500万円」の前提が、すでに古くなっています。

いま検索で出てくる経営管理ビザの解説記事には、古い要件のまま更新されていないものが少なくありません。2025年10月16日に施行された改正で、要件は大きく変わっています。500万円が3,000万円に、常勤職員1名の雇用が義務化。そして経営管理の経験または関連する学位の保有が必須になりました。申請者か常勤職員のどちらかに日本語能力要件がつき、事業計画書の専門家による事前確認が必要です。これだけの変更が同時に行われました。

私自身も改正の運用については、いまだに現場で迷う場面があります。施行から9か月ほどが経ちましたが、入管側の判断軸が固まりきっていない部分は残っていると思います。入管庁のQ&Aも2026年6月12日に更新され、個人事業主の取扱いなどが追記されました。

創業を目指す外国人の方と話す機会が多いのは、自分が起業家として動いてきた背景があるからかもしれません。この記事は、「これから日本で会社を設立して経営管理ビザを取りたい外国人」と、それを支援する立場の方に向けて、私が現場で見ている範囲で解説します。断言できる範囲と、まだ流動的な範囲は、できるだけ分けて書いていきます。

改正の内容は「実態のある経営者を選別する」方向への転換

改正の核心は「実態のある経営者を選別する」方向への転換

改正の根拠は、入管法の上陸基準省令と施行規則の改正で、出入国在留管理庁の公式サイトで内容が公表されています。一つひとつの要件を見てみると、ばらばらの数字を変更したのではなく、「実態のある経営をしているか」を多角的に問うように設計し直された印象があります。

500万円という資本金は、事業の規模としては小さいと見られているのでしょう。中身が個人事業に近い会社でも、500万円なら集めようと思えば集められる金額です。一方で3,000万円は、本気で日本で事業を回していく覚悟がないと用意しにくいと思います。常勤職員を1名以上雇うという要件も、雇用の実態を強く問う方向です。日本語能力の要件は、日々の運営や行政手続きで支障が出ないようにということだと思います。事業計画書の専門家確認は、申請書類だけ整えて中身が空っぽ、という状態を弾くためでしょう。

つまり、形式の整え方ではなく、経営者として実態のある活動をしているかを見にきているというのが私の見解です。

ただ、この「実態を問う」方向には、施行から日が浅く、運用が固まりきっていない論点も残ります。「経営管理経験3年」をどう証明するか、海外で取得したMBAが「経営管理に関する専門職学位」に該当するか、日本語能力の証明はどの書類で足りるか。法令の文言だけでは判定できない部分が残っています。私が断言できる範囲と、流動的な範囲を、ここから先は分けながら書きます。

なお、すでに「経営・管理」で在留している方については、経過措置が置かれています。施行日から3年を経過する日(2028年10月16日)までの間に在留期間更新許可申請を行う場合は、改正後の基準に適合していないことのみをもって不許可になることはない、と入管庁が明示しています。3年を経過した後の更新申請では、改正後の基準に適合する必要があります。

資本金3,000万円という数字の重さ

資本金3,000万円という数字の重さ

冒頭のケースで、最初にぶつかったのが資本金です。

先に制度の中身を正確にしておきます。上陸基準省令が求めるのは「申請に係る事業の用に供される財産の総額が3,000万円以上であること」です。事業主体が法人の場合、これは株式会社における払込済資本の額(資本金の額)、または合名会社・合資会社・合同会社の出資の総額を指します。入管庁のQ&Aでは、資本準備金・資本剰余金・利益剰余金はここに含まれないと明記されています。従業員の給与額や事務所の維持費を合算して3,000万円に届かせることもできません。複数の会社を経営している場合も合算は不可で、いずれか1社が単独で3,000万円以上である必要があります。管理者として活動する場合も、この資本金要件は満たさなければなりません。

事業主体が個人の場合は、資本金ではなく、事業所の確保や雇用する職員の給与(1年間分)、設備投資経費など、事業を営むために必要なものとして投下されている総額で見られます。ここは2026年6月のQ&A更新で改めて示された部分です。

登記の資本金を3,000万円にすれば足りるのか

ここは誤解が多いところですが、

入管庁が示している確認方法は「登記事項証明書等により確認する」というものです。そして改正後の提出書類一覧を見ると、事業規模を明らかにする資料として挙げられているのは、常勤職員が1名以上であることを明らかにする賃金支払関係の文書と住民票、貸借対照表、登記事項証明書、そして「その他事業の規模を明らかにする資料」の4つです。

ですので、法令上の建付けとしては、登記事項証明書と貸借対照表で確認される、と解するのが相当です。「出所疎明資料が必須の提出書類である」という説明を見かけますが、公式の一覧に照らすと、そこまでは言えません。

とはいえ、出所の説明が一切不要になるとは考えていません。理由は3つあります。

ひとつは、省令が見ているのが「払込済」の資本だという点です。払い込んだ形だけ作ってすぐ引き出せば、資本金の実体は残りません。ふたつめは、改正で貸借対照表の提出が明示された点です。入管庁のQ&Aは、決算期が到来していない場合でも、設立時または設立後の任意の時点における貸借対照表を作成して提出するよう求めています。払い込んだ資本金を直後に引き出していれば、現預金の残高として表に出ます。みっつめは、「その他事業の規模を明らかにする資料」という包括的な項目が残っていることです。要件を満たしていることを資料で示すのは申請人側ですので、資金の動きに不自然な点があれば、審査の過程で追加の資料を求められることがある、と解釈しています。

まとめると、「登記に3,000万円と書けば終わり」でもなければ、「出所疎明資料が必ず要る」でもありません。原則は登記事項証明書と貸借対照表で確認され、疑義があれば説明を求められます。これが、いまの公式資料から読み取れる範囲だと考えています。

実際のケースでどう組み立てたか

冒頭のケースでは、自己資金2,500万円は本人の中国の銀行口座で過去5年の積み立てが追える状態でした。残り500万円が父親からの調達だったので、贈与契約書を中国語と日本語の併記で作り、送金記録を全部保存する形で進めました。中国側の税務処理と、日本側の贈与税の取扱いは別の論点になるので、税理士にも入ってもらいました。

「半年前に突然3,000万円の残高ができている」というパターンは、説明の負担が重くなります。法令上の必須書類ではないとしても、出所を尋ねられたときに答えられる状態にしておくほうが、結局はいちばん速いというのが私の考えです。過去の口座履歴を遡れるようにしてから相談に来ていただくほうが、手戻りは少なくなると思います。

経営管理経験3年と学位、海外取得の取り扱い

経営管理経験3年と学位、海外取得の取り扱い

経歴ベースで通すなら事業の経営または管理についての経験3年以上、学歴ベースで通すなら経営管理に関する博士・修士・専門職の学位、または申請に係る事業の業務に必要な技術・知識に係る分野の博士・修士・専門職の学位、のいずれか。海外での経験・学位も対象になります。スタートアップビザなどの起業準備活動(在留資格「特定活動」)の期間も、この3年に算入できると入管庁が明示しています。

ここは現場で運用が割れそうな部分です。たとえばIT企業のプロジェクトマネージャー職は「経営管理経験」に該当するか。中堅企業の部長職はどうか。海外取得のMBAは「経営管理に関する専門職学位」に当たるか。書面で見ると一見クリアなようでも、入管が経歴・学位の中身を実質判断する場面が増えると考えています。

今回のケースでは、過去10年の中国IT企業での経歴のうち、5年分の管理職としての職務内容を「組織のマネジメント・予算管理・人事評価」の3点に整理して、職務経歴書を中国語と日本語の併記で作成しました。MBAは持っていないので学歴ルートは取れませんが、経営管理経験ルートで疎明する方針です。

海外MBAが「経営管理に関する専門職学位」に該当するかどうかについては、私自身は「該当する可能性は高いと考えている」程度に留めています。経営学に関する正規の修士課程を経ているなら、文言上は対象になり得ます。ガイドラインも「外国において授与されたこれに相当する学位を含みます」と明記しています。ただ、海外大学の認証ステータス、修了証の翻訳、履修科目の証明、このあたりで具体的な書類を求められたときに、すぐに揃えられるかは別の話です。MBAをお持ちの方は、修了証だけでなく履修科目の英文成績証明書まで取り寄せておくと、いざというとき良いと思います。

日本語能力と常勤職員、組み合わせて設計する

日本語能力と常勤職員、組み合わせて設計する

申請者本人または常勤職員のいずれか1人が「日本語教育の参照枠」(CEFR準拠)のB2相当以上の日本語能力を持つことが、新しい要件となっています。証明手段は入管庁が明示していて、JLPTのN2以上、BJTビジネス日本語能力テスト400点以上、日本の大学など高等教育機関の卒業、日本の義務教育修了と高等学校卒業、中長期在留者としての20年以上の在留、このいずれかです。これから来日する起業家にとって現実的なのはN2かBJTの二つで、手元に何もなければ、N2の合格証明書を取りに行くのがいちばん確実です。

また、日本人を常勤職員として雇えば、自動的に日本語要件は満たせます。外国人本人が日本語に自信がない場合には合理的な選択肢になるかと思います。

ここで「常勤職員」の要件と「日本語能力」の要件が、設計上で繋がってきます。雇用義務の1名としてカウントできる常勤職員は、日本人、特別永住者、そして入管法別表第二の在留資格をもつ外国人(永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者)に限られます。技術・人文知識・国際業務などの就労ビザで日本にいる外国人を雇っても、この要件のカウントには入りません。一方で日本語要件のほうは、N2などを立証できる就労ビザの外国人常勤職員でも満たすことができます。雇用義務の1名にはカウントされない、という非対称な作りになっています。常勤職員かどうかは、週の所定労働時間30時間以上、労働日数が週5日以上かつ年間217日以上、雇用保険の被保険者であること、などから判断されます。社会保険の加入もセットと言えるでしょう。

今回の起業家さまは、日本語N1なので、本人で日本語要件を満たせています。常勤職員は、後から技術系の日本人スタッフを採用する計画でしたが、ここは設立直後から確保する形に修正しました。常勤職員1名の雇用は、要件を満たすためだけの形式的な雇用にすると、後で雇用実態を疑われる材料になるかと思います。給与水準が地域の最低賃金と乖離していたり、業務内容が説明できなかったりすると、審査で詰まる可能性が高いと考えられますので、雇うなら、事業に実際に必要な人を雇うのが原則だと思います。

事業所の選定と、事業計画書の専門家事前確認

事業所の選定と、事業計画書の専門家事前確認

改正で運用が厳しくなったもう一つの論点が、事業所要件です。

自宅兼事務所は、原則として認められません。ここは入管庁が改正ガイドラインで明示しました。賃貸借契約書で「事業用使用」が明記されているか。出入口は独立しているか。表札や郵便受けに会社名が出ているか。シェアオフィスやバーチャルオフィスは、専有スペースの有無や法人登記の可否によって判断が分かれるところで、ここはまだ線引きが読みにくい部分です。私の感覚としては、最低限「個室と独立した郵便受け」は確保したほうが、後の審査で揉めにくいと考えています。事業所の広さについては、入管庁も「一律にお答えすることは困難」としたうえで、改正後の規模に応じた必要かつ十分な広さを求める、という書き方に留めています。

今回の場合、当初は「自宅兼事務所でも申請してみる」という案も検討したのですが、結局は東京都内の賃貸オフィスを月額20万円程度で契約する方向にしました。改正後の事業所要件で揉めるリスクと、月20万円の家賃の比較で、後者を取った形です。

それから、事業計画書の専門家事前確認。これは改正で新しく入った要件で、確認者になれるのは施行日時点で中小企業診断士、公認会計士、税理士の3資格に限られます。海外の同種資格は対象外だと入管庁が明示しています。自社の役員や従業員も客観性の観点から評価者になれず、外部顧問となっている公認会計士や税理士は認められます。求められるのは、計画に具体性、合理性が認められ、かつ実現可能なものであるかを評価すること。形式的な押印だけでは足りません。費用は確認を行う専門家との個別の取り決めになるので、早めに見積もりを取っておくと計画が立てやすいです。事業計画書そのものは行政書士が作成支援し、最終的な経済合理性のチェックを別の専門家に依頼する、という分業が現実的なフローだと感じています。

今回の案件も、いま事業計画書の専門家確認のフェーズに入っています。中小企業診断士の方に入ってもらって、収支計画の根拠を細かく詰めているところです。

会社設立とビザ申請を、どう繋いで進めるか

会社設立とビザ申請を、どう繋いで進めるか

ここまでが要件の話です。次は、実際にどう動くかの話になります。

経営管理ビザの本申請は、日本に在留して経営活動を行う状態が前提になります。海外から呼び寄せるなら在留資格認定証明書の交付申請、すでに別の在留資格で日本にいるなら在留資格変更許可申請、というルートに分かれます。会社設立の準備のために在留期間4か月の「経営・管理」を使う運用は従来からありますが、改正後の許可基準は在留資格の決定時に適用されるため、設立前の段階でどこまで求められるかは、今回公表された公式資料からは読み取れません。このルートを検討する場合は、事前に管轄の入管へ確認したほうが安心です。今回は、すでに家族とともに日本に在留していたので、在留資格変更のルートで進めています。

設立そのものの順序は、定款の作成から始まります。事業目的の文言は、経営管理ビザの審査を意識して具体的に書きます。

定款ができたら、株式会社の場合は公証役場での認証、合同会社なら省略できます。電子定款にすれば印紙代4万円が不要です。資本金の払込、法務局での設立登記、登記事項証明書の取得、税務署と各役所への届出、常勤職員の採用と社会保険関連手続き、という流れが続きます。改正で常勤職員の雇用が必須になったことで、社労士の関与が設立直後から発生する形に変わりました。設立直後にやるべき手続きの量は、改正前より明らかに増えたと言えます。

すべてが整った段階で経営管理ビザの本申請です。

先ほど書いたとおり、資金の出所を証する資料は、この一覧には含まれていません。求められる場面があるとすれば「その他事業の規模を明らかにする資料」の枠か、審査の過程での追加提出になる、と解釈しています。書類の整合性を保つのが地味に大変で、ここで時系列が合わないと差し戻されるでしょう。

情報の鮮度こそが、いちばんの武器になる

経営管理ビザの2025年10月16日改正は、外国人が日本で起業するハードルを明確に上げる方向になりました。資本金3,000万円、常勤職員1名雇用、経営管理経験または関連学位、日本語能力、事業計画書の専門家確認。一つひとつは、経営者としての活動の中身を問う要件で、私は方向性として理解できる改正だと感じています。

入管庁のQ&Aは施行後も更新されています。2026年6月12日の更新では、個人事業主の3,000万円の考え方、施行後3年以内の更新申請で新基準を満たさない場合の取扱い、そして納税状況に問題がなくても労働関係法令の遵守状況や社会保険・雇用保険の加入状況、許認可の取得状況に問題があれば更新審査で消極的に評価されうること、が追記されました。要件を満たして許可を得た後も、経営者として守るべきルールは見られ続けます。

入管庁のQ&Aはこちら

これから経営管理ビザで日本に来ようとしている方は「ネット記事の情報が古いまま放置されている」という事実を、まず疑ってみてください。500万円で取れる、常勤職員不要、日本語能力要件なし、と書いてある記事は、改正前のものです。最新の情報は、出入国在留管理庁の公式情報か、改正後に内容を更新している事務所の情報を確認してください。

冒頭のケースは、いまも進行中です。事業計画書の専門家確認のフェーズで、想定より時間がかかっていますが、要件をすべて満たしながら書類の整合性を保って進める、という地味な作業を一つずつ片付けています。改正後の経営管理ビザは、会社設立とビザ申請を別々に考えるのではなく、最初の事業計画づくりの段階から「ビザの要件と会社設立を同時に設計する」発想が必要だと、現場で改めて感じているところです。

経営管理ビザの取得と会社設立を、改正後の要件で一括サポート

2025年10月16日改正後の新要件(資本金3,000万円・常勤職員雇用・日本語能力要件・事業計画書の専門家事前確認)に対応した形で、外国人の方の会社設立から経営管理ビザ申請までを一貫してサポートしています。定款設計、資金の説明資料の整理、事業所の選定、専門家事前確認の手配、税理士・社労士との連携も含めて、最初の事業計画づくりからお手伝いします。
英語・中国語での対応も可能です(必要に応じて翻訳者を交えてのご相談)。

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