経営戦略

建設業許可の要件と取り方|書類で詰まりやすい論点と、現場で間に合わせる動き方

本記事は、当事務所の代表行政書士が実務に基づき執筆しています。

ある火曜日の夕方、知り合いの工務店専務から電話がかかってきました。。「うち、建設業許可なくても今までやってこられたんだけど、急にゼネコンから『来期から許可業者じゃないと発注できない』って言われちゃって…」。声に焦りが滲んでいました。

聞けば年商1.2億円、社員8名の中堅工務店。下請として木造住宅の内装工事を中心に20年やってきた会社です。500万円未満の工事ばかりで上手く回っていたのに、元請の方針転換で一気に「持っていないと終わり」の状況になった。同じような相談がここ2〜3年で確実に増えていて、特に2025年に入ってから一気に問い合わせが増えたなと思っています。

許可業者は全国で約47万社。建設業者全体の半分強です。半分強しか許可を持っていない、ということは、裏を返すと許可なしでも食べてきた会社が大量にあるということでもあって、その層が今になって急に押し出されている、という風に私は見ています。

私自身は行政書士業務の中で建設業許可の取得・更新・業種追加を継続的に扱ってきました。本を読めば書いてある制度の話ではなく、現場で実際に詰まる論点と、依頼者がどこで動けば間に合うのか、というところを書きたいと思います。教科書的な「5要件・7ステップ」の整理は他のサイトに任せて、この記事では、私がこれまで相談を受けて「ここで詰まる」と感じてきたポイントを軸に進めます。途中で迷ったら、自社に該当する箇所だけ拾い読みしてもらえたらと思います。

そもそも、許可がないと何が起きるのか

そもそも、許可がないと何が起きるのか

建設業許可は、建設業を営もうとする者が国土交通大臣または都道府県知事から受ける営業の許可(建設業法第3条第1項)。29業種それぞれ別々に取る必要があります。「建設業許可」とひとくくりに語られがちですが、実態は29種類の許可が別個に存在している、と思って良いかと。

許可がいらないのは「軽微な建設工事」だけ。建築一式工事以外なら請負代金500万円未満(消費税込)、建築一式なら1,500万円未満または延べ150㎡未満の木造住宅。これが施行令第1条の2の世界です。

この「500万円未満」を分割で逃げ切ろうとする人がいますが、これは通用しない。「490万円ずつ2回」は、工事の実態が一体なら一つの請負として合算されます。逃げ道として最初に思いつく発想だと思うのですが、実際にこれで指摘を受けて指名停止になった会社を見たことがあって、本当に割に合わない。

無許可で500万円超を請けた場合の罰則は3年以下の懲役または300万円以下の罰金(建設業法第47条第1項第1号)、法人にも両罰規定で罰金(同法第53条)。さらに罰金が確定すると5年間は許可申請ができません(同法第8条第9号)。罰金300万円より、その後5年間の業界締め出しの方が経営的にはきつい。「うっかり一回だけ」が事業を畳む引き金になる、というのは大袈裟な話ではないです。

冒頭の専務のように「ウチは500万円未満しか受けないから関係ない」と思っていた会社が、元請の方針一つで突然許可を求められる現実があります。CCUS(建設キャリアアップシステム)の本格化、社会保険加入の徹底、施工体制台帳の整備。複数の制度が同時に効いていて、無許可業者が締め出される空気は確実に強まっている、と私は感じています。

最初に決める3つのこと|「どの許可を取るか」

最初に決める3つのこと|「どの許可を取るか」

要件の話に入る前に、まず「自社はどの許可を取るのか」を決める必要があります。決める軸は大きく3つだけ。営業所がどこか、下請に出す金額はいくらか、業種は何か、です。

営業所が1つの都道府県の中だけにあれば「都道府県知事許可」、2つ以上の都道府県にまたがる場合は「国土交通大臣許可」(建設業法第3条第1項)。混同されがちですが、これは工事を行う場所ではなく営業所がどこにあるかで決まります。東京の知事許可業者でも北海道の現場で工事を請けることに法律上の問題はない。意外とこの誤解は多いです。

一般建設業と特定建設業の分け方は、発注者から直接請け負う1件の工事で下請に出す金額の合計が4,500万円(建築一式は7,000万円)以上になるかどうか(建設業法第3条第1項第2号、施行令第2条)。それ未満なら一般、それ以上なら特定。

ここの基準金額、令和5年1月の改正で引き上げられたのですが、ご存知ない方が結構います。一般→特定の境目は旧4,000万円→新4,500万円、建築一式は旧6,000万円→新7,000万円。「特定が必要かも」と思っていた事業者が、結果的に一般のままで済むようになったケースが現実に出ています。古い情報のまま準備を進めていないか、ここは念のため確認してほしい部分です。

業種は29種類(土木一式・建築一式の2種+専門27業種)から選びます。たとえば内装仕上工事業の許可だけでは屋根工事業の500万円以上の工事は請けられない。実務でよく聞かれるのが「とりあえず複数取った方がいいですか?」。私の答えは「実際に請ける業種だけ」です。業種を増やすたびに専任技術者の配置が必要になり、業種追加の手数料も5万円かかる。あとから足せるので、最初から欲張らない方が動きが早い。

要件は5つ。でも、現場で詰まるのはこの2つです

要件は5つ。でも、現場で詰まるのはこの2つです

建設業法第7条と第15条が定める許可基準は、ざっくり5つあります。経営業務の管理責任者(経管)、専任技術者(専技)、誠実性、財産的基礎、欠格要件に該当しないこと。社会保険を独立で見るなら6つ、と言う人もいます。

ただ、私の感覚として、相談を受けて「ここで詰まるな」と思うのは、大半が経管と専技の2つです。残り3つで落ちるケースは、確かにあるんですが、頻度は全然違う。なので順番を変えて、まず経管と専技を厚めに書きます。

経管(経営業務の管理責任者)

建設業に関する経営経験を持つ役員等を、常勤で1人置く要件(建設業法第7条第1号、施行規則第7条)。求められるのは、建設業の役員等として5年以上の経験、もしくは「役員等に準ずる地位」での5年以上の経験、または建設業以外で5年以上+建設業で2年以上の役員経験、です。

令和2年10月の改正で、ここに新しい選択肢が加わりました。常勤役員等+補佐者2名の組合わせでも認められるパターンです。これがけっこう大きな改正で、「うちは経管がいないから許可なんて無理」と諦めていた会社の中には、この改正で道が開けたケースが何社もあります。古い情報のまま動きを止めている人は、まず最新の要件で再診断してほしいところ。

で、ここからが本題なんですが、経管要件で詰まる原因はほぼ「経験の有無」ではなく「証明書類の有無」です。法人で取締役として在籍していた事実は登記事項証明書で立証できます。問題は「常勤だったこと」を健康保険被保険者証や住民税特別徴収の記録で示す必要があり、これが揃わないケース。出向役員だった、非常勤だった、健康保険を任意継続にしていた、というパターンで詰まる。

個人事業主時代の経験はもっとシビアで、確定申告書の控え5年分が要ります。「昔の申告書?捨てちゃったよ」と社長が笑顔で言った瞬間、こちらは内心冷や汗、というのは一度や二度ではないです。税務署の「申告書等閲覧サービス」で書写することは可能ですが、写しの再発行はできません。これは社長に「申告書の控えと健康保険関係の書類は10年捨てるな」と伝えてほしい、と切に思います。

専技(専任技術者)

営業所ごとに、一定の資格または実務経験を持つ技術者を専任で1人置く要件(建設業法第7条第2号、第15条第2号)。一般建設業なら、国家資格保有者、または指定学科卒+3〜5年の実務経験、または学歴問わず10年の実務経験、のいずれか。特定建設業なら、これに「元請として4,500万円以上の工事を2年以上指導監督した経験」が加わるか、1級国家資格者ならクリア。

10年実務経験ルートが最頻ですが、立証は厳しい。月単位で業務内容が分かる書類(注文書・請求書・契約書のいずれか)が、120ヶ月分必要です。10年×12ヶ月=120。月1枚で120枚。これを毎月捨てずに保管していた会社は、現実には少ない。

立証で詰まったときの選択肢は3つくらい。①社員に1〜2級施工管理技士を取らせる、②有資格者を採用する、③同業他社に在籍した期間も含めて書類を集め直す。①は時間がかかる、②は人件費がかかる、③は元勤務先の協力次第。どれも一長一短で、この見極めだけで1ヶ月議論することもあります。

なお、近年「専任技術者」を「営業所技術者等」と表記する文脈も出てきていますが、現時点では実務上、依然として「専任技術者」の呼称が広く使われていると私は解釈しています。今後の運用を見ながら、追って表記を整える形になりそうです。

残り3つと社会保険

ここから先は、詰まる頻度が経管・専技に比べると低いので、駆け足で。

誠実性(建設業法第7条第3号)は、請負契約で不正・不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。役員等の宅建業免許取消し歴などが見られますが、ここで落ちる例は稀です。

財産的基礎・金銭的信用(建設業法第7条第4号)は、一般建設業なら自己資本500万円以上、または500万円以上の残高証明、もしくは融資証明、または直前5年間許可業者として継続営業した実績、のいずれか。新設法人なら設立時の資本金500万円でクリアできるので、設立段階で許可を視野に入れているなら、設立時に資本金を500万円にしておくのが定石です。設立後に「100万円じゃ足りなかった」と気づいて増資するのは、登記費用も時間もムダ。

特定建設業の財産要件(第15条第3号)は、欠損比率20%以下/流動比率75%以上/資本金2,000万円以上+自己資本4,000万円以上の全部クリア。これはかなり厳しい数字なので、特定を取りにいける規模感の会社は限られます。

欠格要件(建設業法第8条)は14号にわたる長いリストですが、実務で問題になるのは主に2つ。①禁錮以上または特定の罰金刑から5年経過していない(第8号・第9号)、②役員に暴力団関係者がいる(第14号)。前者で多いのが、過去の道路交通法違反(無免許運転や酒気帯び)の罰金刑を本人もすっかり忘れていて、申請後に発覚して取下げになるパターン。「過去5年で罰金以上の刑がないか」を、役員全員に必ず確認してください。これは申請前にやらないと取り返しがつかない。

社会保険は、健康保険・厚生年金保険・雇用保険への加入が要件として明確化されています(平成29年から)。法人や常時5人以上の個人事業主は強制加入なので、ここを満たしていない時点で他の要件確認に進めません。未加入から整えるには、加入手続きから保険料決定、要件適合証明まで2〜3か月のリードタイムを見ておくべきです。許可取得を逆算するなら、社会保険の整備を一番最初に置く、というのが実務の鉄則だと思っています。

取得までの動き方|3か月で間に合わせる逆算

取得までの動き方|3か月で間に合わせる逆算

ここからは「実際にどう取るか」の話です。要件を満たしている前提なので、要件チェックがまだの方は前章に戻ってください。

最初は業種と区分の確定。次に書類集め。これが一番時間がかかります。経管なら登記事項証明書・健康保険関係書類・確定申告書5年分、専技なら卒業証明書・資格証・実務経験を示す月別の注文書/請求書、財産要件なら残高証明書、欠格要件なら身分証明書(成年被後見人等でない証明)と登記されていないことの証明書。書類集めだけで2〜4週間が普通です。

書類が揃ったら申請書(様式第1号〜)を作成します。提出先によって様式や記載要領が一部違うので、都道府県のホームページから最新の手引きをダウンロードしてから取りかかってください。東京都と大阪府でも書式の細部が違いますし、神奈川と千葉でも違います。

申請書ができたら、いきなり本提出ではなく、許可行政庁に事前相談に行くのを強くおすすめします。多くの自治体では予約制で30分〜1時間の相談枠が設けられている。書類の不備や記載ミスをここで潰せると、補正のリスクが大幅に下がる。地味ですが、効果は絶大です。

本提出と手数料納付は次のステップ。知事新規は許可手数料9万円、大臣新規は登録免許税15万円、知事更新と業種追加はそれぞれ5万円。9万円か15万円かは営業所の所在で決まる、と覚えておけば十分。

そして審査期間。知事許可で約30日、大臣許可で約90〜120日が目安です。自治体差があり、繁忙期(3〜4月、9〜10月)には知事でも45日程度になる地域もある。「いつまでに許可が必要か」から逆算して動かないと間に合いません。元請から「来月から発注切替」と言われてから動いた専務がいましたが、結局その案件は他社に取られた。冒頭の専務のように3か月で間に合わせるためには、相談から逆算して書類集めの2〜4週間+審査の30日+予備の数週間、を確保する必要があります。

許可通知書を受け取ったら、店舗・営業所に許可票(建設業の許可票)を掲示する義務が発生します(建設業法第40条)。サイズは縦35cm以上×横40cm以上。ホームセンターやネット通販で2,000〜5,000円程度。許可取得と同時に発注しておくのがおすすめです。掲示忘れも法令違反になります。

自分でやるか、行政書士に頼むか

自分でやるか、行政書士に頼むか

新規取得の代行報酬は、東京都内の事務所で10万〜20万円、地方では8万〜15万円が相場感です。複雑な案件(経験立証が難しい、複数業種同時取得、特定建設業など)では25万〜40万円になることもあります。

「自分でやれば10〜20万円浮く」と考える方が多いのですが、本業を止めて30〜80時間を費やすコストと、補正で再提出になって1〜2か月余計にかかるリスクを考えると、人件費換算では見合わないケースが大半、という風に感じています。

| 観点 | 自分で取る | 行政書士に依頼 |
| — | — | — |
| 法定費用 | 9〜15万円 | 9〜15万円 |
| 追加コスト | 自分の30〜80時間 | 報酬10〜20万円 |
| 期間 | 書類準備2〜3か月+審査1か月 | 書類準備2〜4週間+審査1か月 |
| 補正リスク | 高い | 低い |

シンプルな案件(経験立証が容易で1業種のみ)なら自力もありだと思います。判断基準を一つだけ挙げるとすれば、「経管・専技の経験立証で迷う点が一つでもあれば依頼」です。書類集めや申請書記入の作業負担より、立証ロジックの組立てミスで補正対応が長引く方が、経営的にはずっと痛いので。

取って終わりではない|許可取消しになる人が一番多い場面

取って終わりではない|許可取消しになる人が一番多い場面

許可は取った瞬間がゴールではなく、むしろそこからの維持の方が落とし穴が多い。

毎事業年度終了後4ヶ月以内に決算変更届(事業年度終了報告書)を出す義務があります(建設業法第11条第2項)。これを5年間まったく出していなくて、更新申請の段階で慌てて5年分まとめて出す、という会社を実際に何度も見てきました。最悪のケースだと、未提出が原因で更新が通らず許可が失効します。「許可は取ったけど決算届を出していなかった」が原因で、その後5年間ふりだしに戻る、というのは本当によく見る話です。

役員、専技、経管、商号、営業所、資本金などに変更があったら、原則として2週間以内に変更届(建設業法第11条第1項)。特に専技や経管が辞めた場合、後任を配置できないと要件喪失で許可取消しになりかねません。退職予定者がいる時点で動き出すのが鉄則。

許可の有効期間は5年(建設業法第3条第3項)。満了日の30日前までに更新申請しないと、満了とともに失効。自治体によっては3か月前から受け付けているので、早めに動いて損はありません。

CCUSや経営事項審査(経審)との関わりも重要なのですが、これだけで一記事になる話なので、別の機会にまとめて書きます。今は「公共工事を取りに行くなら経審もセット」「現場入場でCCUS登録を求められる」という認識だけ持っておいてもらえれば。

申請でつまずく典型例を3つだけ

申請でつまずく典型例を3つだけ

失敗パターンを並べると30は出てきますが、頻度の高い3つに絞って書きます。

一つ目は経管の常勤性立証。役員として在籍していたこと自体は登記簿で証明できるのですが、「常勤だった」を健康保険被保険者証や住民税の特別徴収記録で示す段で、書類が出てこない、というのが頻発します。出向役員だった期間や、社会保険を任意継続していた期間はカウントが効かないので、思っていたより経験年数が足りないという事態になることがあります。

二つ目は専技の実務経験10年の立証。月単位で120ヶ月分の注文書または請求書が要る、という制約は最初に書きましたが、「請求書を毎年シュレッダーにかけてた」で詰まるケースが本当に多い。これはもう、リカバリーで資格取得や有資格者採用に切り替えた方が早い場面もあります。書類のない過去を証明することはできません。

三つ目は欠格要件の見落とし。役員のうち一人でも建設業法第8条の欠格要件に該当すると、会社全体が許可取得不可になります。一番多いのが、過去5年以内に道路交通法違反で罰金刑を受けていたパターン。本人もすっかり忘れていて、申請後の身分証明書で発覚して取下げ、という流れ。これは申請前に役員全員に確認するだけで防げる失敗です。「過去5年、罰金以上の刑を受けたことありますか」と一人ずつ聞いてください。気まずいですが、聞かないと後でもっと気まずくなります。

おわりに|建設業許可は、要件チェックから逆算して進める

冒頭の工務店専務は、相談から3か月後に建設業許可(建築工事業・大工工事業の2業種、知事一般)を無事取得しました。ゼネコンとの取引も継続。経管要件で書類が一部足りず、社労士と連携して健康保険の加入記録を遡って取り寄せたのが最大の山場で、ここに2週間ぐらい持っていかれました。間に合ったのは正直、ぎりぎりでした。

建設業許可は、要件・区分・業種・人材・財務という複数の変数が絡む話です。家を建てるときの基礎工事に近いと思っていて、表面の見栄えに関わる部分よりも、最初に決める基礎の設計の方が、後の自由度を決めます。後から直そうとすると壁を全部剥がす羽目になる、というあれです。冒頭の専務も、相談に来てから3か月で間に合いはしましたが、半年前から準備していれば、社会保険の整備期間を確保できて、もっと穏やかに進められたはずです。

「許可を取ること」自体がゴールではなく、許可を持って事業を継続的に回していくことが本来の目的だと思っています。要件確認→書類集め→申請→取得後の維持、という流れを、なるべく早い段階で逆算してもらえたらと思います。

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