顧問先の従業員4名のシステム開発会社の社長から「宅建業の免許を取りたいんですが」と連絡が来たのは、ある平日の昼過ぎでした。事業は好調で、顧客にオフィス物件の紹介までワンストップで提供したいという構想でした。
定款を確認した瞬間、嫌な予感が当たりました。事業目的に不動産関連の文言が一切ない。「情報処理システムの開発・運用」「経営コンサルティング業務」それだけ。
宅建業免許の審査では、法人の場合、定款・登記簿の事業目的に宅建業を営む旨の記載があることが前提になります。案の定、窓口で受理を拒否された。臨時株主総会を開き、議事録を作成し、法務局へ目的変更の登記を申請。登録免許税3万円と約2週間の待ち。予定していた店舗の契約にも遅延が出ました。
率直に思ったのは、なぜ設立時に専門家へ頼まなかったのか、ということです。設立時に「宅地建物取引業」という一行を入れておくだけで、この費用も時間もゼロだった。テンプレートで設立したと聞いて、合点がいきました。
いま私は行政書士として会社設立に関わりますが、それ以前に自らシステム開発の事業を立ち上げ、2社を経営し、事業売却(Exit)も経験しています。定款を「設立に必要な書類」ではなく「経営の設計図」として見る視点は、その経験から来ています。事業のフェーズが変わるたびに、定款の記載内容が意思決定のボトルネックになるか、それとも足かせなく進めるかが分かれる。その差を実体験として知っているからこそ、テンプレート定款のリスクについて書いておきたいと思いました。
テンプレート定款がなぜ問題になるのか

上の事例は特殊なケースではありません。許認可が絡む業種では、同じ構造の問題が繰り返し起きています。建設業も人材派遣業も、許認可基準に沿った「正確な文言」が事業目的に入っていないと、法務局では設立登記が通っても、その後の営業許可が下りません。
許認可の審査と登記通過は別問題
テンプレートは「登記を通す」ことを目的に設計されています。許認可の審査基準まで織り込んだ設計にはなっていない。ここにテンプレートの構造的な限界があります。
たとえば建設業の許可申請。「建築工事業」と書いてあっても、実際に申請する工事の種類と定款の目的の文言が一致していなければ審査で止まることがあります。「建設業」とだけ書いても、都道府県によっては具体的な業種名(土木工事業、電気工事業、など)の記載を求められるケースもある。人材派遣業も「労働者派遣事業」という正確な表現が必要で、「人材紹介」では派遣の許可は取れません。
テンプレートにはこうした行政手続き上の要求は反映されていません。登記が通ることと、その後の営業許可が下りることは、まったく別の問題です。
定款変更が招く数週間の事業停滞
定款変更の手続きも、金額以上に時間と手間が厄介です。株主総会の特別決議(会社法第466条・第309条2項11号)が必要で、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成を要する。一人社長ならすぐ通せますが、共同経営なら招集通知から始まる手続き一式が必要になり、さらに登記申請から完了まで1〜2週間。その間、許認可の申請はストップする。
3万円の登録免許税自体は、大した金額ではありません。ただ、勝負をかけたいタイミングで2週間止まるのは、経営上は3万円では済まない損失です。事業を拡大したい、新しいサービスを始めたい、人を採用したい。そういうモメンタムのあるタイミングに限って「ちょっと待ってください、定款の変更が先です」と言われる。成長に水を差されている感覚は、経験した人にしかわからないもどかしさがあります。
資金調達や事業売却における定款の影響
もう一つ、資金調達や事業売却を考えている方へ。私が事業売却を経験した際、買い手企業のデューデリジェンスで定款は初期段階で確認されました。譲渡制限の有無、機関設計の状態、事業目的の範囲、株主構成。整備されていない定款は「この会社は管理がずさんなのでは」という疑念を持たれる材料になります。金額の大きな話ほど、こういう細かいところが効いてくる。投資家からの出資を受けるタイミングで定款の不備が見つかると、「整備が終わってから改めて」と言われて調達のタイミングを逃しかねません。定款は外向きの信頼性にも影響するというのはあまり語られませんが、実感として持っています。
絶対的記載事項は形式ではなく、経営判断として書く

会社法第27条が定める絶対的記載事項は5つ。これが欠ければ定款自体が無効になる項目です。テンプレートにも当然含まれていますが、「何をどう書くか」で会社の将来が変わります。
目的
許認可の場面で最も実害が出るのがこの項目です。宅建業、建設業、人材派遣業、古物商――許認可を取る可能性がある事業は、その業種に対応した正確な文言を入れておく必要があります。
ここで注意したいのは、単に「将来やるかもしれないことを全部入れろ」という話ではないこと。事業目的を30個も並べた定款は、金融機関の融資審査で「何をやっている会社なのか不明」と判断される材料にもなります。現実的には10〜15項目程度が目安で、1番目にメイン事業を置く。登記事項証明書を見た相手が最初に目にするのがこの1行目ですから。
末尾に「前各号に附帯関連する一切の事業」を入れるのは定石です。これを忘れているテンプレートはさすがに少ないですが、念のため確認してください。
もう一つ、実務的に重要な話を付け加えます。事業目的の「書き方」は行政の審査基準に合わせる必要がある場面があります。たとえば宅建業なら「宅地建物取引業」、人材派遣なら「労働者派遣事業」という正確な表現を使わなければ、許可・免許の審査で止まります。「不動産業」や「人材紹介業」では駄目なケースがあります。建設業にしても、「建設業」だけでは足りず、具体的な業種名(土木工事業、建築工事業、電気工事業など)の記載を求められる都道府県もありました。
こうした細かい文言の問題は、テンプレートはもちろん、freeeやマネーフォワードの自動生成でも対応しきれない部分です。許認可が絡む業種で設立する場合は、その許認可の審査基準を先に確認してから事業目的を決めるべきで、この順番が逆になると冒頭の事例のような手戻りが発生します。
商号
社名を響きだけで決める人がいますが、設立前にJ-PlatPat(特許情報プラットフォーム)で商標を確認しておくべきです。同業種で既に登録されている名称と被っていた場合、後から社名変更を迫られる可能性がある。看板、名刺、ウェブサイト、口座名義、取引先への通知。これを全部やり直す羽目になったら洒落になりません。
同一住所・同一商号でなければ登記自体は通りますが(商業登記法第27条)、商標や不正競争防止法はまた別の土俵です。登記が通ることと、その名前を事業で安全に使い続けられることは別の話ですので、商標調査は無料でできるのに5分の手間を惜しんで後から数十万円の損害を被るのは割に合いません。
本店の所在地
定款には「神戸市北区」のように最小行政区画までの記載にとどめてください。番地まで書いてしまうと、同じ区内で事務所を移転しただけで定款変更と登録免許税3万円が必要になります。定款は市区町村まで。番地は設立登記の申請書に記載すれば足ります。
創業期はオフィスを移転することが珍しくありません。最初は自宅やシェアオフィスで始めて、事業が軌道に乗ったら専用の事務所を借りるという流れは自然です。そのたびに定款変更が必要になるのは無駄でしかなく、最小行政区画での記載にしておけば、同じ市区町村内の移転は登記の住所変更だけで済みます。
テンプレートによっては番地まで記入する欄が設けられているものがあり、そのまま埋めてしまう人が多いのですが、これは知っているかどうかだけの話なので、ここで知っておいてください。
出資される財産の価額
会社法上は1円でも設立できます。ただし実務は単純ではありません。
建設業の一般許可には、自己資本500万円以上(または500万円以上の資金調達能力)という財産要件があります。設立時に資本金を500万円以上にしておけば、この要件を最初から満たせます。融資を受ける際、資本金が少なすぎると信用面でマイナス。逆に1,000万円以上にすると初年度から消費税の課税事業者になります。
テンプレートには空欄があるだけですから、こうしたバランスは自分で(または専門家と一緒に)判断するしかありません。許認可の要件は業種ごとに異なるので、設立前に「自分の事業に許認可が必要か、必要なら資本金や財産の要件はいくらか」を確認しておくことを強くお勧めします。設立後に「足りなかった」と気づいて増資するのは、手間もコストも余計にかかります。
発起人の氏名・住所
一人で設立するなら特に悩むことはないですが、問題は複数人で設立する場合の出資比率です。
よくあるのが友人同士の50:50。これは実務上、最も危険な比率だと私は考えています。意見が対立したとき、どちらも過半数を持っていないのでデッドロックになる。何も決まらなくなってしまいます。
会社法上、普通決議は議決権の過半数で成立しますので、50:50では、一方が反対すれば何も通りません。取締役の選任も、報酬の決定も、事業計画の承認も。「今は仲が良いから大丈夫」と思うかもしれませんが、事業の方向性で意見が分かれるのは数年後には十分あり得る話です。そのとき議決権が拮抗していると、会社として意思決定ができなくなってしまいます。
設立時に51:49にする、あるいは特定事項について拒否権を定款で定めておくなど、どちらかの手当ては必要です。この議論を最初に避ける人が非常に多いのですが、関係が良好なうちにこそ決めておくべき事項です。関係が悪化してからでは、出資比率を変えること自体が困難になります。株式の譲渡には贈与税や譲渡所得税が絡み、場合によっては数百万円の税負担が発生するため、「やっぱり比率を変えたい」と思っても簡単にはいきません。
譲渡制限は「入れておけば安心」では済まない

テンプレート定款で最も見落とされやすいのが相対的記載事項です。定款に書いて初めて効力が発生する項目。ここでは、設立時に特に検討すべきものについて触れますが、一つだけ深掘りさせてください。株式の譲渡制限の話です。
中小企業なら譲渡制限はほぼ必須。株式を第三者に譲渡する際に会社の承認を要する旨を定款に定めます。これがないと、株主が自由に持ち株を売れてしまうからです。
テンプレートによっては譲渡制限が最初から入っているものもありますが、入っていないものも存在します。freeeの自動生成では入りますが、ネット上の簡易テンプレートでは省略されていることがあります。設立後に「入っていなかった」と気づいたら、それだけで定款変更が必要になりますので、まず確認してください。
ここまでは多くの方がご存知だと思います。
譲渡を不承認とした際の株式買取り義務
問題は、この先です。譲渡制限があるから「自社の承認がなければ株は社外へ出ない」と思っている方が大半ではないでしょうか。実態は違います。
最近増えているのが、少数株主や親族外の株主が敵対して、株式買取業者に株を売りたいと申し入れてくるケース。株主総会で譲渡を不承認にすれば株は外へ出ないと考えがちですが、譲渡承認請求には「不承認なら会社か指定買取人が買い取れ」という請求を付けることができ(会社法第138条)、この請求付きで不承認とした場合、会社は自ら買い取るか指定買取人を指定しなければなりません(会社法第140条)。
買取額は一般的に純資産額の持分割合相当。会社がこの額に応じなければ、裁判所が売買価格を決定する手続きに進み(会社法第144条)、判例でも純資産額をベースにした算定になる傾向があります。つまり、譲渡制限は「株を外に出さないための万能の盾」ではなく、「外に出さない代わりに自社で買い取る義務を生む規定」でもある。この点を理解せずに譲渡制限を入れても、いざという時に自社の資金繰りを直撃します。
一人株主の病気や事故で経営が止まるリスク
では一人株主の場合はこの心配がないかというと、別の落とし穴があります。株主が一人しかいない会社で、その株主が重病や事故で意思表示ができなくなった場合、株主総会が開けなくなります。株主総会が開けないということは、次の代表取締役を選任する決議もできない。契約行為は一切不能になる。金融機関とのリスケ交渉、取引先との更新契約のサイン、資金繰り改善のための保険商品の解約、決算申告の承認など会社の運営が完全にストップします。従業員がいれば給与の支払いは続くのに、経営判断は一切できない。事業が死んでいくのを見ているしかない状況になってしまいます。
つまり、自社株の集約にも分散にも、それぞれ固有のリスクがあるのです。
集約のリスクは「株主が動けなくなったら会社全体が止まる」こと。分散のリスクは「敵対的な株主に買い取り請求を突きつけられる」こと。どちらも定款の譲渡制限の一文だけでは解決しません。
これに対応するには、経営者の家族構成と株主構成における人間関係を網羅した上での定款設計が必要です。場合によっては任意後見制度の活用(株主が意思表示できなくなった場合への備え)や、属人株(株主ごとに異なる議決権を付与する仕組み)の導入まで視野に入れることになります。集約と分散、両方へのリスクヘッジを同時に組み込んで初めて、譲渡制限は本来の機能を果たすと私は考えています。
テンプレートの譲渡制限の一文だけでは、こうした事態に対処できませんので、私が定款設計でこだわっているのは、まさにこの部分です。単に「入れるか入れないか」ではなく、その条項が実際に発動したとき何が起きるかまで想定した設計。
取締役の任期設定における注意点
なお、譲渡制限を付けた会社は「非公開会社」に分類され、取締役の任期を最長10年まで延長できるメリットもあります(会社法第332条2項)。任期2年だと2年ごとに重任登記が必要で、その都度登録免許税1万円(資本金1億円超の会社は3万円)。10年にすればその分のコストがゼロになります。
ただし、共同経営者を取締役に入れている場合は任期を長くしすぎると裏目に出ます。関係性が悪化した役員を任期満了で退任させるまでに長期間待たなければならない。正当な理由なく解任すれば残存任期分の報酬相当額を損害賠償請求される可能性があります(会社法第339条2項)。一人社長なら10年、共同経営なら4〜5年。このあたりが実務的な落としどころだと思います。
書面決議と事業年度は地味だが後から効いてくる項目

譲渡制限ほど切迫した話ではありませんが、実務上入れておくべき条項を2つ挙げます。
意思決定をスピードアップさせる書面決議の活用
一つ目は取締役会の書面決議(会社法第370条)。取締役全員が書面やメールで同意すれば、実際に会議を開かなくても決議が成立する仕組みです。定款に定めておかないと使えないものです。取締役が複数いる会社でわざわざ全員の予定を合わせて会議を開くのは、案件によっては手間に見合わない。軽微な承認事項をメールで回覧して全員がOKを出せば成立、という運用ができるだけで、日常の意思決定が相当楽になります。
ただし全員一致が要件なので、一人でも反対があれば通常の会議が必要になりますから、万能ではないけれど、入れておいて困ることは何もありません。
資金繰りと節税に直結する事業年度の決め方
二つ目は事業年度の設定。テンプレートでは4月〜3月になっていることが多いですが、これをそのまま使っていいかどうかは考える余地があります。
実務的な判断基準を挙げます。まず、繁忙期と決算月を重ねないこと。法人税の納付(決算から2か月後)が資金繰りの苦しい時期と被らないようにすること。そして、設立初年度の消費税免税期間を最大化するために、設立日と決算月の距離を離すことです。
特に3つ目は見落とされがちで、設立前に知っておくと得する話です。
資本金1,000万円未満の会社は原則2期分の消費税が免除されますが、1期目の長さは「設立日から最初の事業年度末まで」で決まる。
4月1日設立で3月決算なら1期目はほぼ12か月フルに使えますが、4月1日設立で9月決算だと1期目は6か月しかない。同じ「2期免税」でも、1期目が長い方がトータルの免税期間は長くなるし、売上が月100万円の会社なら、この差は消費税で数十万円の差になりえます。
テンプレートの決算月をそのまま使う場合、最低限この3つの観点でチェックしてください。合わなければ変えるべきです。事業年度は任意的記載事項なので定款に書かなくても効力は生じますが、書いておく方が安定した運営に繋がります。
定款変更のリアルな手間。「後で直せばいい」の本当のコスト

テンプレートのまま設立して、後から定款を変更する場合の実際のプロセスを整理しておきます。
まず株主総会の特別決議。一人会社なら書面一枚で済みますが、株主が複数いれば招集通知から始まる手続きが必要です。非公開会社でも原則として総会日の1週間前に招集通知を発送しなければなりません(会社法第299条1項)。
可決後、法務局へ変更登記を申請。議事録、株主リスト、委任状(代理申請の場合)等の添付書類を揃え、目的変更なら登録免許税3万円。処理に1〜2週間。補正が入ればさらに延びることになります。
許認可の申請は登記事項証明書との整合性が求められるため、登記完了まで申請に進めず、「定款変更→株主総会→登記申請→登記完了→許認可申請」と数珠つなぎになり、最初のミスが1か月以上のタイムロスに膨らみます。
設立時にもう少し考えておけば、この手続きは全部不要です。「後で直す」のコストは、変更1回あたり3万円+2週間。2回3回と重なれば、最初から専門家に依頼して設計してもらう費用を余裕で超えます。
一人会社であれば変更手続き自体はまだシンプルです。株主総会も自分一人で書面決議すれば済むからです。厄介なのは、株主が複数いる場合。全員の合意が得られなければ特別決議は通らず、定款変更自体が不可能になります。先ほど書いた50:50の出資比率で設立して、後から定款を変えたいのに相手が同意しないパターンは最悪で、実際にこじれると裁判沙汰にまで発展するケースもあります。出資比率の問題と定款変更の困難さは、セットで考えておかなければならないということです。
電子定款で4万円を節約する方法

定款の内容とは別に、形式の話も少し書いておきます。定款は紙で作るかPDFで作るかを選べます。紙の場合は4万円の収入印紙が必要ですが、電子定款(PDF)にすればこの印紙税は不要になります。設立直後の4万円は地味に大きいので、特別な理由がなければ電子定款を選んでください。
「自分で電子定款を作れるのか」という疑問があると思います。結論から言えば、作れます。ただし、マイナンバーカード、ICカードリーダー、電子署名ソフト(Adobe AcrobatのPro版など)の環境を一から揃える必要があります。カードリーダーは数千円程度ですが、電子署名ソフトはサブスクリプション費用がかかるものが多いです。一回きりの設立のために環境構築する時間と費用を考えると、正直割に合いません。
既に環境のある行政書士や司法書士に依頼すれば、電子定款の作成は定款設計の一環として対応できます。印紙税4万円が不要になるメリットだけで依頼費用のかなりの部分をカバーできるので、内容の設計と電子化をセットで依頼するのが、コストパフォーマンスとしては最も合理的だと思います。
テンプレートとの正しい付き合い方

テンプレート自体は有用です。定款の基本構造を知るための参考資料としてはよくできています。freeeやマネーフォワードの設立サービスも手軽で便利です。
問題は、そこで「完成」にしてしまうこと。テンプレートが想定しているのは標準的な会社の型であって、あなたの会社の事業計画や許認可の要件や株主関係を反映したものではありません。テンプレートは「出発点」として使い、自社の事情に合わせてカスタマイズする。捨てる必要はないけれど、それだけで完結させるのは危険です。
行政書士に定款設計を依頼する場合、テンプレートとの違いは一つ。あなたの会社に合わせて設計されているかどうかです。事業計画、将来の許認可、株主構成、家族構成、場合によっては経営者の健康リスクまで含めたヒアリングを経て、それらを踏まえた条項構成になっている。テンプレートにはない「なぜこの条項がこの会社に必要なのか」という根拠が一つひとつに紐づいています。
設立代行の費用は確かにかかりますが、先ほど書いた通り電子定款にすれば印紙税4万円が不要になるので、専門家への依頼費用の大半はここでカバーできます。テンプレートで設立した後に定款変更を2〜3回繰り返すコスト(登録免許税6〜9万円+そのたびに2週間の手続き停止)と比べれば、最初から設計した方が安いというのは、数字の上でも明らかです。
最後に
テンプレートで十分な会社もあります。正直に言えば、一人社長で許認可も不要、将来の資金調達も組織拡大も想定していないなら、テンプレートで問題ないケースは多いです。その場合にまで「絶対に専門家に頼め」とは言いません。
ただ、少しでも「この先事業を広げるかもしれない」「人を入れるかもしれない」「誰かから出資を受けるかもしれない」という可能性があるなら、話は変わってきます。設立後に「定款が邪魔をしている」と気づいたときのコストは、変更1回あたり3万円+2週間。これが2回、3回と重なれば、最初から設計した方が安かった、という結論に必ず行き着くでしょう。
私はシステム開発を9年やってきた人間なので、どうしてもソフトウェアの設計と重ねて考えてしまうのですが、初期設計を適当にやると後工程で必ずツケが来るのは定款もまったく同じです。データベースのテーブル構造を本番稼働中に変更するのがどれだけ大変か、エンジニアの方ならわかると思います。定款の変更も、会社が動いている最中にやるから面倒なのであって、設立前ならいくらでも自由に設計ができます。
設立は一度きりの作業です。でもその定款は、会社が存続する限り効力を持ち続ける。最初にどこまで考えるかで、その後の自由度が決まります。設立登記を通すことがゴールではなく、設立後に始まる経営のスタートラインに立つための準備。そういう意識で定款に向き合ってもらえたらと思います。
会社設立を「経営の設計図」から始めませんか?

定款のテンプレートでは見落としがちな「将来の足かせ」を、設立段階で排除します。事業目的の設計から資本政策、機関設計、株主構成まで、あなたの会社の成長戦略に最適化した定款をご提案します。
神戸の行政書士なら神戸北行政書士事務所|資金調達実績多数