「来月から、元請のゼネコンが下請契約に産廃収集運搬の許可を必須にすると通知してきた。すぐ取れますよね?」。この種のご相談には、残念ながら「すぐには無理です」とお答えするしかありません。
産業廃棄物収集運搬業の許可は、申請すればその月のうちに出るタイプの許可ではありません。最初に立ちはだかるのが講習会で、申し込みから修了証を手にするまで通常1〜2か月。修了証を取ってから申請を出して、自治体の審査(標準処理期間)がさらに60日。トータルで「相談→講習→申請→許可受領」まで3〜4か月かかるのが普通です。
業務範囲を広げたい解体業者・運送業者・リサイクル業者の方から産廃許可の相談を受ける時、私が最初に必ず聞くのは「いつから取引が始まる予定ですか」。許可は、いつ取れるかから逆算して全体を組まないと、結局のところ事業機会を取り逃すからです。
ここから、要件・費用・スケジュールの順に整理していきます。ネット記事にあまり書かれていない、実際に詰まりやすいところを中心に。
なお、この記事は「産業廃棄物(普通産廃)」の収集運搬で、積替保管なしの新規許可申請を念頭に書いています。特別管理産業廃棄物(石綿含有廃棄物・廃PCB・感染性廃棄物など、人や環境に対する危険性が高い廃棄物)を扱う場合は別の許可(特別管理産業廃棄物収集運搬業の許可)が必要で、講習会も別建てになります。建設業の解体現場でアスベストが出る可能性のある事業者の方は、普通産廃と特管の両方を視野に入れておいたほうがいいです。
産廃収集運搬の許可申請、最初に立ちはだかるのは「講習会」

産業廃棄物処理法(廃掃法)第14条に基づく産廃収集運搬業の許可は、都道府県知事が出します。積替え保管なしの収集運搬は2011年の法改正で都道府県単位に一元化されたので、同じ県内であれば政令市ごとに許可を取り直す必要はありません。兵庫県内なら窓口は県(各県民局)で、神戸市の許可が要るのは、運搬の範囲が神戸市内で完結する場合や、市内に積替え保管施設を置く場合に限られます。申請の必要書類のひとつが、JWセンター(公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター)が実施する講習会の修了証で、これがないと原則として受け付けてもらえません。
新規許可用の講習(収集・運搬課程)は、いまはオンライン形式が主流です。講義動画を視聴したうえで、申込時に選んだ試験日に会場で修了試験を受ける流れで、受講料はオンライン25,300円、会場で2日間講義を受ける対面形式なら29,700円(いずれも税込)。合格すると、試験の約3週間後に修了証が簡易書留で届きます。試験の合格率は公表されていませんが、依頼者の方々の経験から言えば、真面目に講義を聞いて要点ノートを取れば落ちる試験ではない、という印象。とは言え、軽く見て予習せずに臨んで不合格になる方もたまにいて、そうなると再試験までさらに時間を食うので、油断は禁物です。
問題はここから先です。入金確認からテキスト到着まで約2週間、講義動画の視聴、修了試験の予約枠、試験後の修了証発送まで積み上げると、申し込みから修了証入手まで通常1〜2か月かかります。直近の試験枠が埋まっていることも多く、空きを求めて隣県の会場を予約する方も珍しくありません。「明日からでも受講できるんでしょ」と思っている方が、ここで一度面食らいます。
ここで一つ、知っているとスケジュール調整がしやすくなる話を書いておきます。法人申請の場合、講習会を受講するのは「代表者」「役員(監査役を除く)」「政令使用人」のいずれか1名で足ります。社長本人がスケジュールを取れない場合は、現場で動いている役員の方が代わりに受講するという選択肢もあります。誰が受講するかは、業務の回し方に合わせて柔軟に組めます。
修了証の有効期間は5年です。どの都道府県の会場で受けても全国の申請に使えるので、あとから別の自治体に新規申請を出す時に受講し直す必要はありません。ただし、5年後の更新申請には別途「更新講習」(1日。オンライン16,500円・対面19,800円)の修了証が必要なので、許可を取った時点で5年後のカレンダーに更新講習の予定を入れておく、というのが実務上の安全策だと思っています。
5つの要件のうち、実際に詰まるのは「経理的基礎」

許可を取るための要件は、廃掃法と各自治体の許可基準で整理されていて、実務的には次の5つに集約されます。
1. 講習会の修了証を有していること
2. 経理的基礎を有していること
3. 欠格事由に該当しないこと
4. 適切な運搬施設(運搬車両・運搬容器・駐車場の使用権原)があること
5. 適法かつ適切な事業計画を整えていること
このうち、講習会・運搬施設・事業計画の3つは、お金と手間をかければクリアできる類の要件です。問題は残りの2つで、特に「経理的基礎」で詰まる方が、私の経験では一番多いです。
経理的基礎というのは、要は「事業を継続できるだけの財産的な土台があるか」という審査です。具体的には、直近3年間の決算書(貸借対照表・損益計算書・株主資本変動計算書・個別注記表)と納税証明書を提出して、自治体側が次のような観点で見ます。
利益が計上されているか。債務超過になっていないか。過度に運転資金が不足していないか。
直近3年が黒字で財務状況が安定していれば、ほぼストレートに通ります。ただ、現実の中小企業で「3年連続黒字」という会社ばかりではありません。建設業界は工事の波があって、1期だけ赤字、というのは普通に起こります。
直近1期赤字の方の場合、私が顧問先にお伝えしているのは「中小企業診断士・公認会計士・税理士のいずれかが作成した経営改善計画書を添付できないか」という選択肢です。各自治体の運用差はあるものの、向こう3〜5年の収支見通しと改善のための具体的な施策が記載された計画書が添付されていれば、現状の赤字でも事業継続性は認められやすい、という運用が多いと感じています。
「黒字決算が出るまで待つ」という選択肢も理屈の上ではありますが、それだと1〜2期分の取引機会を逃すことになります。顧問税理士と一緒に計画書を作って動くほうが、たいていの場合は合理的です。
設立直後で決算がまだ1期分しかない、もしくは設立して間もない法人の場合は、また別の話になります。この場合は、資本金の額、向こう数年の事業計画書、創業時の自己資金の根拠資料などで判断される運用が一般的です。資本金が極端に低い(1〜10万円)と、経理的基礎の観点で否定される可能性が高くなる。会社設立の段階で「最低資本金は1円から」を真に受けてしまうと、こういう局面で響いてきます。
もう一つ厄介なのが「欠格事由」です。廃掃法は、役員(持株比率5%以上の株主、政令使用人を含む)のうち1人でも次に該当すると不許可、という構造になっています。
破産者で復権を得ていない者。拘禁刑(旧・禁錮)以上の刑を受けて5年を経過していない者。廃掃法・大気汚染防止法・水質汚濁防止法など環境関連法の違反で罰金以上の処罰を受けて5年を経過していない者。暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年を経過していない者。心身の故障により業務を適切に行えない者として環境省令で定める者。ちなみに、かつてあった「成年被後見人・被保佐人は一律欠格」という規定は、2019年の法改正で廃止されて最後の類型に置き換わっています。
この5年の起算点は、刑の執行が終わった日(執行猶予なら猶予期間が満了した日)です。役員のうち1人でも引っかかると、その役員を退任させない限り会社として許可は取れません。意外と忘れられがちなのが「過去の交通違反で罰金が出ている」ケースで、これは廃掃法の欠格事由には該当しません(罰金での欠格は廃掃法および環境関連法の違反に限定されます)。ご相談時には必ず役員全員にヒアリングをして、ご本人の自覚がない過去の刑事処分まで含めて確認するのですが、ここで「あ、そう言えば10年前に……」と出てくることがたまにあります。10年前なら問題ないですが、4年前だとアウトです。
申請手数料は81,000円。ただし「自治体の数だけ」かかる

費用の話に移ります。
新規許可申請の法定手数料は、全国一律で81,000円です(収集運搬のみ・積替保管なしの場合)。国の政令で標準額が定められていて、各自治体もこれに沿っているので、自治体ごとに高い安いという話はほぼありません。
ただし、構造上の特徴として、産廃収集運搬の許可は「積込地」と「荷下ろし地」の両方の都道府県知事の許可が必要です。例えば、神戸の解体現場で発生した廃材を大阪の中間処理施設に運ぶ場合、兵庫県知事の許可と大阪府知事の許可、両方を取る必要があります。
この見落としが、とにかく多いです。「神戸で出る廃材を運ぶから兵庫県だけ取ればいい」と思い込んで進めて、あとから運搬先(中間処理施設の所在地)を確認したら大阪や京都が混ざっていた、という流れが定番。気づいた時点で、複数府県分の申請が必要になります。
仮に3府県分が必要になると、法定手数料だけで81,000円×3=243,000円。これに講習料25,300円が乗って、約27万円。ここに加えて、申請書類の作成、自治体ごとの面談予約、面談での質疑応答、補正対応をご自身で全部やるとなると、3か月でも終わらない可能性があります。
行政書士に依頼する場合の報酬の相場は、1自治体あたり10〜13万円程度。複数自治体を同時に頼むと2件目以降が割引になる事務所が多くて、3自治体セットで25〜30万円というレンジが標準的です。法定手数料243,000円+行政書士報酬25〜30万円で、トータル約50〜55万円というのが、3府県取得の現実値です。
法定手数料以外の細かい出費もあります。決算書のコピー代、定款の謄本、登記事項証明書(1通600円)、住民票・印鑑証明書(1通200〜400円)、運搬車両の自動車検査証のコピー、駐車場の賃貸借契約書のコピー。これらを5〜10通単位で集めると、地味に5,000〜10,000円ほど出ていきます。
申請から60日では終わらない。許可までの実際のスケジュール

「申請したら60日で許可が下りるんですよね?」。これも、よく聞かれる質問です。
各自治体が公表している標準処理期間は60日(東京都の場合)ですが、これはあくまで「申請を受け付けてから許可証が出るまで」の純審査期間です。しかも、書類の補正で止まっている期間はこの60日に含まれません。実際の取得までのスケジュールは、もっと前の段階から積み上げる必要があります。
ざっくりした目安を時系列で書くと、
- 相談・要件確認に1〜2週間
- 講習の申し込みから修了証受領まで1.5〜2か月
- 申請書類の作成・必要書類の取り寄せに3〜4週間
- 自治体への申請(予約や事前相談が要る自治体が多い)と受理に1〜2週間
- 標準処理期間(審査)に約2か月
- 許可証受領後の事務手続き(車両表示・マニフェスト準備)に1〜2週間
これらを合計すると、相談から実際に運搬を始められるまで3〜4か月が現実的な目安です。これを1〜2か月で押し込むのは、講習の試験枠と自治体の混雑次第ではほぼ不可能、というのが現場感覚としての結論。
しかも、審査の途中で補正連絡が入ると、ここからさらに1〜2週間の延長が発生します。経理的基礎の追加資料、運搬車両の写真の追加、駐車場の使用権原の補強資料、欠格事由関連の追加照会。これらが入ると、当初予定が後ろにスライドしていく。
「2か月後から取引が始まる予定なので」と相談に来られた時、私が「正直に言って、間に合わせるのは難しいです」と答えるのは、この時間構造があるからです。元請との交渉で開始時期を1か月後ろにずらせるなら現実的、というラインで動くことが多いです。
自分で申請するか、行政書士に頼むかの判断軸

「自分でやれば30万円浮く」というのは、確かにそうです。法定手数料と講習料は誰がやっても同額なので、行政書士報酬の25〜30万円が浮く計算になります。
ただ、私自身が依頼を受ける立場なので客観性は怪しいですが、率直に書きます。損益分岐点は「事業開始予定日までの余裕」と「経理的基礎で要相談か」の2つで決まると考えています。
自分で申請する選択が合理的なのは、
- 1自治体だけの申請で済む方
- 直近3年が安定黒字で経理的基礎の心配がない方
- 取引開始まで4〜5か月の時間的な余裕がある方
- 行政書類の作成に苦手意識がない方
逆に、複数自治体にまたがる、直近期が赤字、取引開始まで2〜3か月しかない、という方は、行政書士に頼んだほうがトータルでは安く済むことが多いです。先に書いた通り、補正対応で2週間遅れただけで取引機会の一部を失うこともあるので、報酬25〜30万円と機会損失を天秤にかけると、依頼する方が合理的に見える場面が増えます。
「時間と機会損失をいくらと見るか」。結局のところ、ここに尽きるんじゃないかと思います。
自力で進める場合の落とし穴も、一つだけ挙げておきます。申請書類の中で意外と詰まるのが、運搬車両の写真と駐車場の使用権原を示す書類です。車両の写真は「車両の前面」「側面」「ナンバープレート」「荷台」「許可番号表示位置」を含めた数枚を、自治体ごとに微妙に違うフォーマットで撮らなければいけません。駐車場の使用権原は、自社所有なら登記簿、賃貸なら賃貸借契約書のコピーが必要で、契約書に「産業廃棄物運搬車の駐車に使用してよい」旨が書かれていないと別途オーナー承諾書が必要、という運用をする自治体もあります。これは事前に確認しておかないと、申請当日に書類不足で受け付けてもらえない事態になります。
許可を取ってからが本番。マニフェスト・車両表示・更新

許可は取って終わりではない、という話を最後に。むしろここからが、実務では長く効いてくる部分です。
許可証が手元に届いた瞬間から、運用ルールが発動します。代表的なものを挙げると、
マニフェスト(産業廃棄物管理票)の対応。排出事業者から廃棄物と一緒にマニフェストを受け取り、運搬を終えたら10日以内に、運搬終了を記載したB2票を排出事業者へ返送する義務があります(交付時の控えであるA票は、最初から排出事業者の手元に残ります)。最近は紙のマニフェストではなく、JWNETの電子マニフェスト利用が主流になってきました。収集運搬業者としての年間基本料は13,200円。紙伝票の管理コストを考えると電子化の方が結果的に安い、という事業者の方が増えてきています。
車両への許可番号・名称表示。運搬に使う車両には、「産業廃棄物収集運搬車」の表示と、許可番号、事業者名(または氏名)を見える形で表示する義務があります。マグネットシートやステッカーで対応するのが一般的で、1台あたり1〜2万円かかります。
書類携帯義務。運搬中の車両には、許可証の写しまたは電子マニフェストの登録番号がわかる書類を携帯する必要があります。任意停止検査で確認されるので、車内にファイルで常備しておく運用が無難です。
変更届の提出。役員の変更、車両の変更、住所変更などが発生した場合、原則として10日以内に変更届を出す必要があります(法人の役員変更のように登記事項証明書の添付が要るものは30日以内)。これを忘れたまま放置して、更新の時に「届出と登記の整合性が取れません」と止まった例を、私も何度か目にしました。
5年ごとの更新許可。許可の有効期間は5年で、更新申請の手数料は73,000円、更新講習(オンライン16,500円・対面19,800円)の修了証も別途必要です。更新申請は「許可期限の2〜3か月前を目途に提出」という運用の自治体が多く(神戸市もこの運用です)、期限ギリギリで動き始めると間に合わないことがあります。
更新を忘れて期限が切れると、新規申請からやり直しです。法定手数料の差は81,000円−73,000円=8,000円ですが、再度3〜4か月のリードタイムが必要になり、その間取引が止まる。これは事業上、本当に痛い。私は依頼者の方には「許可を取ったら、5年後のカレンダーに更新通知の予定を必ず入れてください」と伝えています。
許可取得後にこうした運用負荷が発生する、という話は、申請段階ではあまり意識されません。でも、産廃の許可業者として現場で動き始めると、こちらの運用の方が長く付き合うことになる。「申請して取る」より「取って運用する」の方が、長い目で見ると重い、というのが正直なところです。
おわりに
産廃収集運搬の許可申請は、急ぎで取れる類の許可ではありません。ネット記事で「最短60日」と書かれているのを見かけますが、それは申請から審査完了までの話で、講習会の待ち時間と書類準備期間を加えると、相談から取得まで3〜4か月かかるのが現実です。
5要件のうち書類で詰まりやすいのは、経理的基礎と欠格事由。両方とも、事前に確認すれば対処できる場合が多いので、取引開始予定日が見えた段階で早めに動き出すのがいちばんの安全策です。
産廃の許可は、取って終わりではなく、取ってから始まる経営の話だ、というところだけは、最後にもう一度。取得までの数か月より、取得後5年間の運用のほうが、かかる手間はずっと大きいです。私が依頼者の方に「許可は入り口です」と繰り返しお伝えするのは、ここに理由があります。
産廃収集運搬の許可申請、まずは話を聞かせてください。
取引先からいつまでに必要と言われているか。営業エリアはどこまでか。過去の決算は利益が出ているか。役員に過去の刑事処分はないか。この辺りを一緒に整理すれば、いつまでに何をすればいいか、現実的なスケジュールが見えてきます。「まだ要件を満たすか自信がない」段階のご相談こそ、お役に立てる場面が多いです。
神戸の行政書士なら神戸北行政書士事務所|資金調達実績多数